暁 〜小説投稿サイト〜
闇夜の兵士達 〜戦争の交響曲〜
第1部
第1楽章 内乱
第1話 後方基地 
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いたのは、食堂の閉まるほんのギリギリ前であった。それでも残さずに食べたのだから恐ろしい。 
 

 一方、山田絢一等軍曹は考え込みながら宿舎を歩いていた。先ほどの二人に関してだ。 
 
「はぁ……アイツの脱ぎ癖をどうにかしなければ、夜這いするような輩が現れるぞ……。ひゃぅ!?」
「お疲れだな、山田一曹。ほれ、おごりだ」
「あ、ありがとうございます」

 少女は驚いたように自分の上官―――三村隼也少尉から程よく冷やされた缶コーヒーを受け取る。
 
「どうだ、彼らの様子は?」
「ええ、古参と新兵の溝もだいぶ無くなってきたと思います。ただ、まだ連携が……」
「ほんの少し前まで、お前もピカピカの新人だと俺は思っていたんだが、それが今では、我が小隊の一等軍曹殿だ。まぁ、幼年学校から見込みはあるとは思っていたがな」
「そう言うのはどうかと思いますが、教官殿?」
「これは失礼したな」
 
 三村はそう言うと豪快に笑った。だが、その笑みには明るさは無かった。絢にとって彼は幼年学校からの教官であり、第5師団からの上官だった。第42師団の時の戦友はもう居ない……。

「少尉、補充は未だですか?
 いい加減、遅いと思うのですが……」
「ああ、分かっている。もうすぐ補充が来る」
「それにしても、だいぶ減りましたね……」
「ああ、お前が来た頃には、小隊本部に8名、8名の編制の小銃分隊が3個、支援分隊が12名で44人全員が揃っていたが、今となっては定数より二人少ない小銃分隊、半分になってしまった支援分隊。定数通りなのは小隊本部だけで今では32人。しかも殆どが新顔とは笑えるね」
「ええ、何時も殿を勤めた所為で、この旅団は損失が大きかったですから。お陰で、この旅団は再編制中ですよ。一つの大隊が壊滅するとは思いませんでしたけど……」
「あぁ……、アレは酷かった……。脱出できたから良かったものの、包囲されたからな……。押し潰される寸前だったらしい」
「私はそんな目に遭うのはごめんですね。誰もがそうでしょうけど……。そう言えば、衛士の死の八分間が、普通の歩兵にも通用するとの噂を、少尉殿は聞いた事がありますか?」
「ああ、あの初の実戦から、8分間生き延びれば生きて帰れる、って言う衛士のあの話か?
 全く、人間と言う存在は、どうしてそんな事を容易く信じ込むのか……。どの兵科に居るにしろ、結局はマーフィーの法則だよ。自分の起こした行動の結果、敵に狙われ、命を落とす事になる。死神は皆、平等に訪れるのさ。衛士の場合は戦闘開始から8分間の間で戦死するのが多いが、それだけ戦闘が激しいからだ。その分、8分間で生き残る衛士は全てを学ぶんだ。
 まぁ、全ての兵科に共通して言える事は、一度実戦を経験すれば訓練は無用だ。それでも、熟練兵士でも死ぬときは死ぬ。死の
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