第1部
第1楽章 内乱
第1話 後方基地
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へと入り、目的の部屋へと向かう。
絢は静まり返った刑務所の廊下を、死刑執行人が歩くように足音を響かせながら進む。すると、微かに二人の少女の声が聞こえてきた。
やっぱりか……。そう思いながら絢は声の聞こえる扉の前に立った。その声の主を彼女は知っていた。自分の部下なのだから当然だが。
相も変わらず、片割れの寝起きが悪いようだ。相方が必死に起こしているが効果なし、と。そう思いながら絢は静かに部屋の中へと潜入した。
「優ちゃん〜、もう朝だよ〜。早く起きないと山田さんに怒られるよ〜」
「やだよ〜、冬ちゃん。もうあと一年……」
「どれだけ寝る気なの!?」
「う〜ん……。じゃあ、十年〜……」
「増えてる!?
逆に増えてるよ!?」
「ほう、仁野一等兵……。君は永眠したいようだな……」
「あっ……。ぐ、軍曹殿…?」
ギギギ、と言う音が響き渡りそうなほど、起こしていた少女の頭がぎこちなく動き、絢のほうに向く。その表情には何時の間に、と言う驚愕と、これから行われる刑の恐怖が入り混じっていた。
「篠宮特技兵、君は相方を起こそうとしていた様だが、駄目だったようだな。怠惰な事だな。同罪だ」
絢は、布団から出てこない優ちゃんこと仁野優奈一等兵と、彼女を起こしていた冬ちゃんこと篠宮冬香特技兵の後ろに立ち、握り拳を振り下ろした。
「「ギャ〜ッ!」」
凄まじい音と少女達の悲鳴が、宿舎へと響き渡った。彼女達の頭から白い煙が立ち上りそうなほど良い音が響き、打撲痕が見事に出来上がる。彼女の打撃力には定評があり、その拳骨は良く知られていた。
「さっさと起きないのがいけないのだ、この馬鹿もん!!
とっとと動け!!!」
絢はそう言いながら仁野一等兵の掛け布団に手を掛けて剥ぎ取った。だが、仁野一等兵のシャツは脱げかけており、実にけしからん光景が広がっていた。絢はとっさに掛け布団を投げ返し、怒鳴りつける。
「さっさと着替えて食堂に来い!
もうすぐ朝食だ!!」
絢は顔を真っ赤にさせて、逃げるように部屋を出て行く。なお、彼女に恋愛経験は無い。一方、その二人は呆然としていた。
「軍曹殿は、どうしたんだろうね?」
「わかんない……。シャツが肌蹴ていたから?」
「あぁ、成る程〜」
「でも、彼女は“未だ”だね……。“記憶”の反応とまるで違う。もう少し“時間”が必要」
和やかに話していた二人の少女の雰囲気が変わる。例えるならば、徐々に水が溢れてくる感じだ。
「うん、彼女は“出来上がって”はいない。でも“時間”はもう無い……」
「私達は最善を尽くすだけだよ……。さぁ、軍曹に怒られるのは御免だから準備しよう!」
「あとだけ3年寝る〜……」
「だぁ〜っ……」
結局、二人が食堂に着
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