第1部
第1楽章 内乱
第0話 プロローグ
[2/5]
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
。そう、狂気に溢れ、哀しみに濡れた街の、な」
男はそう言うと呆然としている少女の頭をなでた。少女は男に向かって振り向き、こう言った。
「結局、私の名前は?」
「おっと、そうだったな。お前の名前は―――」
―――絢。その言葉が聞こえた時、少女の意識は覚醒し、それが夢だったことを理解した。そしてここが戦場だと言う事を。
それにしても懐かしい夢だ……。少女はそう思いながら時計を掴み取った。時刻は朝の5時前を示していた。もうすぐ兵士達が起き始めるだろう。
時計のガラスには、ヨーロッパ人とアジア人の容貌を足して二で割ったような顔をした、“黒髪黒目”の美しい少女が写っていた。少女は自分が何所で生まれ、12歳までどのように過ごしてきたかを知らない。彼女にあるのは、戦争の技術だけだった。時刻を確認した少女は、興味がなさそうにそれを元に戻し、首に掛けた認識票を目の前にぶら下げる。
JAPAN Federation Ground Force
絢
山田
G7174533652494054823
AB型
それを見て少女は自身を再認識する。山田絢と呼ばれる人間であり、自分を拾ってくれた義父の付けてくれた名前だと言う事を。
今日は2014年5月20日。何時もの日常が始まる。戦争と言う名の日常が。少女はそう思いながら、歴史を振り返った。世界と自分自身のだ。
全てが始まったのは1950年だった。その年から始まった新たな冷戦によって世界は二分された。
一つはアメリカ合衆国とヨーロッパ連合が主体の北大西洋条約機構と、ソビエト連邦―――後のロシア連邦―――が主体のワルシャワ相互防衛援助条約機構の軍事同盟である機構軍と呼ばれる東京相互防衛援助条約機構。もう一つは中華民主人民共和国連邦―――1936年の西安事件で蒋介石は暗殺されており、その後、国民党は崩壊し、共産党一党支配に―――と、韓国と北朝鮮が合併して出来た大朝鮮民主共和国。南米諸国が纏まってできた南米州機構。アフリカ、中央アジアの一部によって構成される上海経済協力条約同盟。通称、同盟だ。この同盟の締結を後押しした企業グループが存在すると言われているが最中ではない。
1950年までは米、ソ、中の三勢力が互角に影響力を持っていたが、中国が他の二カ国を上回る影響力を付け、押し潰される事を恐れた二勢力が結合した。ただそれだけだった。
新たな二大勢力によって作り上げた民間軍事警備企業は、幾多の代理戦争に参加した。数多の血が流れ、その対立は宇宙にまで広がった。
1950年代のを皮切りに宇宙開発競争も激化し、月面に同盟と機構の大規模な基地が建設されていた。希少資源を獲得する為だ。その為に、二大勢力は月面での軍事衝突に備え、多くの試作兵
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ