第1部
第1楽章 内乱
第0話 プロローグ
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廃墟となった街中を一人の兵士が12歳くらいの少女を背負って歩いていく。その周りを武装した兵士達が囲む。それ以外は死者ばかりだ。
兵士達は皆疲れきった表情を浮かべ、血と埃に塗れていた。また、背負われている少女もボロボロだが、その容貌は異質だった。淡く光る銀髪と雪のように白い肌。その肌に幾多の文字と図形が青い刺青で刻み込まれていた。少女の姿は何処か幻想的で美しく、寂しかった。
一人の兵士が背負われている少女を見ながら口を開いた。その目には哀れみの色が浮かんでいた。そして畏怖の色も。
「隊長、この子を一体どうしますか?
事情が事情なだけに……」
「あぁ、そうだな……」
「うっ……うぅん………」
少女が眠そうに目を擦りながら、少しずつ目を開く。その目は血のように赤く、何所と無く優しい輝きを持っていた。彼女は周囲を見回し、小動物のように首を傾げた。“少し前”の彼女からは想像できない姿だった。
「ここはどこ…?
あなたは…?
それに私は……誰……?」
欧州の訛りが強い、たどたどしい日本語と共に彼女は少し怯えたような表情を浮かべた。その瞳を自身を背負った男を向けた。
そんな少女を見た男はこう答えた。
「ここは戦場。俺は―――。君はここに存在しない者。
少し降りてくれる?」
「…?
うん…」
男はしゃがみ込み、少女を下ろす。少女のほうに体を向けた男は、何の躊躇無く拳銃を彼女に向けて抜いた。遊底を引いて弾丸を装填し、引き金に指をかける。
少女は驚いた表情を浮かべたが、諦めた様に顔を下げた。彼女は自分の運命を察したのだ。男の握る拳銃が彼女に突きつけられ、引き金が引き絞られた。銃弾が少女の頭を粉砕する―――筈だった。
次に起こる事に身構えていた少女は呆然としていた。自分の頭が吹き飛ばされる筈だったのだからだ。だが、銃弾は路面に穴を開けていた。
男はそれを見ながら淡々と喋った。
「君はもうこの世には居ない。俺の放った銃弾が君の頭を吹き飛ばしたのだから。ここにいる全員が証人だ。君はここで死に、新しく生まれ変わったんだ」
「死んで、生まれ変わった?」
「そう、君はもうジェーン・ドゥじゃない。君の住処は俺が用意する。それに君は俺の養子だ。何も心配することはない」
「……そう………私の名前は……?」
「そうだな……少し考えさせてくれ………」
「うん」
少女は安心していた。この男は信頼できる、と直感で感じ取っていたのだ。兵士と少女はヘリに乗り込み、街を去る。街を振り返ったとき、少女の目に閃光が飛び込んできた。
「………」
「人の作り出した忌まわしき炎だ。全てを焼き尽くす暴虐の炎だよ。よく見ておくんだ。これが人間の作り出した地獄の終焉だ
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