第四章
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第四章
「またこれは」
「ああ、奇麗なだけじゃない」
まずその織物には独特の光沢があった。しかしそれだけではなかったのだ。
「肌触りもいいな」
「こんな織物ははじめてだ」
「それで服やそういったものを作るのです」
王女は次にこう命じた。
「よいですね。それでです」
「これでですか」
「そう。これを売るのです」
こう言うのだった。
「それで宜しいですね」
「これを売ればだ」
「そうだな」
王女の言葉から人々はまたあることに気付いたのだった。
「かなりの売り上げになるぞ」
「また利益になるな」
ここで王女の狙いがまたわかった。そして実際に売ってみるとこれがかなりの利益になったのだった。蜂蜜と並ぶこの国の特産品になるのに然程時間はかからなかった。
やがて花も内外に売るようになりこの国はこの三つの特産品と観光で栄えるようになった。国の中は蝶と花で飾られ財政は豊かになる一方だった。全ては王女の功績であった。
皆が王女を褒め称える。しかし当の彼女は静かに微笑んだままであった。どうして喜ばないのかと。キャロルはこう彼女に問うたのだった。
「どうして喜ばれないのですか?」
「どうしてとか」
「ただ静かに微笑んでおられるだけで」
これは彼女のいつもの表情であるだけなので喜びのものではないのだった。
「それだけで。どうしてですか?」
「喜んでいますよ」
彼女はキャロルの問いにこう答えた。
「それはちゃんと」
「そうですか?」
「喜んではいますが。当然のことです」
これが彼女の言葉であった。
「これは」
「当然なのですか」
「国を豊かにし民を笑顔にさせる」
今彼女がしたことだ。
「それは政治に携わる者として当然のことです。違いますか?」
「それはそうですが」
正論である。キャロルも頷くしかない。しかしそれでも彼女は言うのだった。
「ですがそれを果たそうとしない者が」
「それは論外です」
王女はぴしゃりと言って捨てた。
「そうした輩は論外です。政治をする資格がありません」
「そうですね。それは」
「ですが。それでも嬉しいことは嬉しいです」
「本当ですか?」
「ただ。それを顔に出さないようにしているだけです」
真相はこれであった。
「当然のことですから」
あくまでこう言うのだった。しかしキャロルはその彼女に対してさらに問うたのだった。
「それにしても最初は驚きました」
「花や虫を集めるということですか」
「まさか。こんなことになるとは」
これは確かに驚くべきことであった。キャロルにしろ王女がどうかなってしまったのではないかと疑った程だ。しかしその花と虫が今のこの国を作り上げてしまった。これは間違いのない事実である。
「思いも寄りませんでし
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