第百五十五話 加賀入りその五
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「出陣の際はな」
「暴れよと」
「うむ、あの者達は御主の家臣じゃ」
ひいては武田の家臣であるが彼等がまず幸村に仕えているからそれで幸村に対してこう語るのである。
「御主が命じよ」
「では」
「さて、織田信長はな」
信長自身についてもだ、信玄は話した。
「あの者、政もよい」
「確かに、領国をよく治めていますな」
「それも実に」
「民は泰平を楽しんでおります」
「戦も賊もいなくなり」
「田畑も町も日に日によくなっています」
「道も堤も出来ております」
信長の政は細かいところまで及んでいる、それでなのだ。
「九百二十万石の大国がさらに栄えております」
「あのままいけばさらによくなります」
「しかも税も軽いです」
「民は実によい暮らしになっていますな」
「うむ、それを見ればな」
それでだというのだ。
「織田信長、わしと同じだけ政が得意であり好きじゃな」
「御館様と同じだけですか」
「あの者の政は」
「うむ、しかも新しい政じゃな」
信玄は信長の行っている政にそうしたものも見ていた。
「楽市楽座に刀狩りとな」
「それに検地も徹底していますな」
「関所も配しております」
「見事じゃ」
その政に対しての信玄の言葉だ。
「貿易にも力を入れておるしな」
「では政としては」
「あの者は」
「ふむ、欲しいのう」
信玄はここでにやりと笑った、それで言うのだった。
「謙信を右に、信長を左にな」
「御館様の左右に」
「そうされたいですか」
「天下はわしが公方様をお助けして治める」
信玄も天下に号令する野心がある、しかし彼は甲斐の守護であり代々幕府に仕えている身だ、幕府を倒すまではとても思い至らないのだ。
それでだ、こう言うのだ。
「あの二人を左右に置いたうえでだ」
「その織田信長をですか」
「上杉謙信と共に」
「無論他の者達もじゃがな」
氏康や元就もだが、というのだ。
「しかしあの二人はな」
「特に、ですな」
「御館様の左右に」
「うむ、置く」
必ず、というのだ。
「そうする」
「二匹の龍を従えまするか」
高坂がここで信玄に言う。
「それは何と大きなことか」
「そうじゃ、このわしがな」
「そうなればこの天下は収まりましょう」
彼等の力も使ってというのだ。
「必ず」
「その通りじゃ、ではその天下の為にじゃ」
「今はですな」
「政の仕上げじゃ、それが終わってからじゃ」
動くというのだ、信玄もまた動こうとしていた。しかしそれはまだ先のことであった。
信長は加賀に入った、まずは静かだった。だがそれでも彼は油断せずに本陣において居並ぶ諸将に言った。
「ここは門徒の国じゃ」
「はい、ですから」
「この国ではですな」
「迂闊に攻めぬ、物
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