第百五十五話 加賀入りその四
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「上杉謙信、北条氏康、毛利元就、本願寺の顕如殿にじゃ」
「織田信長ですか」
「あの者ですか」
「ではあの者との戦は」
「上杉や北条の時の様にですか」
「油断するでない」
信玄は確かな声で己の家臣達に言う。
「例え我等の赤備えの騎馬隊でもじゃ」
「そうおいそれとは勝てぬ」
「それが織田ですか」
「では御館様」
今度は山縣が言う、武田家きっての猛者である彼が。
「騎馬隊で突進しても」
「織田家には我等があまり持っておらぬものを多く持っておるな」
「鉄砲ですか」
「それですか」
「そうじゃ、鉄砲を多く持っている」
それでだというのだ。
「油断するな、兵の数も多い」
「織田の兵は弱いと聞いていますが」
勝頼があえてこのことを言う、無論彼も織田家の兵の数は侮ってはいない。弱いと思っていても数を考慮せぬ程愚かではないのだ。
「それでもですか」
「そうじゃ、数は我等の四倍近いな」
「はい」
織田は今二十二万、そして武田は六万だ。尚北条も六万であり上杉は五万、そして毛利も五万程である。
「左様です」
「それだけの数で武具もよく鉄砲も多い」
「それを考えれば」
「そしてじゃ」
さらにだというのだ。
「将帥もきら星の如くじゃ、そう」
「そう?」
「そうとは」
「わしと同じだけな」
その彼等を見ての言葉だ。
「優れた将帥に恵まれておるわ」
「何と有り難いお言葉」
「そう仰って頂けるとは」
「しかし織田家もですか」
「人が多いですか」
「狼が率いる犬は強い」
例えそれがどの様な駄犬の群れでもだというのだ。
「そしてその犬の数が多ければじゃ」
「余計に、ですか」
「強うございますか」
「だからじゃ」
それでだというのだ。
「堅固な岐阜ではなくじゃ」
「まずは三河ですか」
「あの国ですか」
「徳川をまず制する」
そしてだというのだ。
「安芸の毛利や北条と共にじゃ」
「織田に対しますか」
「それが殿のお考えですか」
「本願寺、そして上杉ともじゃ」
ここでだ、謙信の名前も出すのだった。
「手を結んでじゃ」
「そして、ですな」
「織田信長を倒しますか」
「武田だけで勝てぬのならな」
それならというのだ。
「他の勢力と手を組んでじゃ」
「では御館様」
幸村がここで信玄に言う、その強い声で。
「戦の際は」
「皆に出てもらう、そして幸村よ」
「はい」
「十勇士達にも命じよ」
幸村の下にいるそれぞれが天下最強と言われる十人の忍達のことだ。
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