第百五十五話 加賀入りその一
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第百五十五話 加賀入り
加賀は守護である冨樫氏を滅ぼしてから長きに渡り門徒の国となっている、俗に百姓が持ちたる国と呼ばれている。
この国から起こる一向一揆に朝倉氏は悩まされてきた。それで宗滴も彼等とそれこそ数え切れぬだけ戦ってきた。
上杉謙信にしても手こずってきた、だから謙信は越後において信長が加賀に向かうと聞いてこう家臣達に言うのだった。
「織田信長は十五万の大軍、諸将と共に加賀に入りましたが」
「それでもですな」
「その織田信長にしても」
「はい、勝つことは難しいです」
そうだというのだ。
「彼の力を以てしても」
「では勝てませぬか」
「一向宗には」
「勝てはしても」
それでもだというのだ。
「大きな傷を負うでしょう」
「では後の戦にもですか」
「影響が出ますか」
「門徒達には私も手を焼いてきています」
謙信も自ら言う。
「ですから」
「だから、ですな」
「織田家のこの度の戦は」
「激しくしかもです」
大きな傷を負うというのだ。
「必ず」
「左様ですか、それでは」
「その後の織田家とは」
「既に公方様とは文を受け取っています」
ここでだ、謙信は家臣達に文を出した。その文がだというのだ。
「出陣の用意を」
「今、ですか」
「今すぐに」
「いえ」
それはとだ、謙信は家臣達に応える。
「まだです」
「ではまずはですね」
「七尾城を」
「やはり堅固です」
七尾城の堅固さは天下に知られている、そしてその堅固さはというのだ。
「まだ陥ちませんね」
「では織田家との戦までに」
「あの城を」
「陥とします」
それが先決だというのだ。
「そのうえで織田信長との一戦になります」
「そういえば公方様の文ですが」
直江兼続がここで言ってきた。
「甲斐や安芸にも届いているそうですね」
「そして相模にもです」
「天下の大大名達にですか」
「そうです、伝え」
そしてだというのだ。
「織田信長打倒の兵を挙げよと申されています」
「織田信長は公方様を軽ろんじておられますか」
「その様です、それはあってはならないことです」
強い声と顔でだ、謙信は言うのだった。
「公方様は武門の棟梁、その公方様をないがしろにしてはなりません」
「織田信長はそこがなっていないのですね」
「そうです、ただ」
「ただ、とは」
「甲斐の虎もそうですが」
謙信は信玄を常に奸臣と言っている、それは何故かというと幕府の以降に逆らい勝手なことばかりしているからだというのだ。検診は今も家臣達に言う。
「幕府をないがしろにし勝手に戦をするなぞ」
「あってはなりませんね」
「絶対に」
「そうです」
まさにその通りだというのだ。
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