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家族
第四章
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いて」
 恒子も。二人はこのうえなく優しい決心を今感じていたのだった。
「いっちゃんは立派になるから」
「絶対やで」
『そこまで聞いて安心したわ』
 父としての安堵の声であった。
『ずっと心配やったけれどこれで』
『安心して。ここで見ていられるわ』
「ずっとここにおるん?」
 修一は母の言葉にふと気付いて問うた。
「ここに。ずっと」
『そうや』
 父が彼に答えた。
『御前を見とるからな』
『別れたわけちゃうで』
「そやったんか」
『だから。安心するんや』
『ずっとな』
 これで声は消えた。だが三人の心の中には何時までも残っていた。
 修治は修一に声をかける。恒子も。
「なあいっちゃん」
「うん」
 今度は感情のはっきりとわかる声であった。しかもそれは明るいものであった。
「わかったな」
「わかったわ。皆ずっとおる」
「そう。そして」
「見守ってくれてるんやな」
 修治はその言葉を聞いてにこりと笑った。彼にもわかっていた。だからこそ笑えるのだった。
「その通りや。そやから」
「また来ような。三人で」
「ああ」
 修治が頷く。恒子も。
「親子で」
「親子か」
「だって養子に入ったやん、僕」
 修一は今はじめてこのことを言ったのだった。
「そやから」
「わかった。ほな」
「親子三人でな。また」
「うん、一緒に来ような」
 三人で話すのだった。三人は今はじめて家族になれた。血は濃くはつながってはいないが。それでもようやく本当の意味で家族になれたのだった。間も無く戦争が終わるがその中で出来上がったささやかな、だが大きな幸せのはじまりであった。


家族   完


                   2007・9・24

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