SAO編
第一章 冒険者生活
8.裁縫職からの依頼
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部屋の明かりが消えた。
この《ソードアート・オンライン》の世界は、だいたいが中世西洋的な造りになっているようだ。
だからなのかは知らないが、殆どの部屋の明かりはオイルランプが主だ。
操作は見た目に反してかなり簡単。ランプを軽くタップして、ウィンドウを立ち上がらせる。そこに表示される【ON/OFF】に触れるだけ。
ただ、中途半端にランプの体をなしているのか、約五時間が経過すると自然に明かりが消える。
普通に、周囲が暗くなったら明かりを点け、寝る時間になったら消すというのなら、至って問題の無い効果時間だ。
だが私にとっては、スイッチを切るまで明かりを灯し続けてくれる蛍光灯が懐かしい。
スイッチを入れ直す時間があるのなら、この《作業》を続けていたいからだ。
「…………」
しかし幸いなことに、窓から漏れる星明かりのおかげで、私は作業を止めるということをしなくて済んだ。外周に近い主街区ゆえに、窓の外には第三層と第四層のプレートに挟まれた星空が見えるのだ。
一心不乱に手を動かす私。SAOにログインして一番良かったことは、眠いのを我慢すれば、どれだけ手を動かしてもだるくならない上に、腱鞘炎にもならない、ということだろうか。
「…………ふー……」
そうこうしている内に《それ》は完成した。
私はすぐに《それ》の出来を確かめる。
「…………っ。……また、違ったわ……」
苦虫を噛み潰したような気持ちになりながら、私は手に持った失敗作(それ)を投げ捨てた。
それは床に落ちると、システムが《廃棄》とみなし、急速に耐久値が減少して、あと数分もすれば消えてなくなる。
既に何十と放り捨てているが、この部屋の足の踏み場が無くならないのだけは助かるかもしれない。
「……駄目、だったかい?」
作業机に座る私の後ろから聞こえてくるのは、押しの弱そうな男の声。
不意に部屋の明かりが点けられる。
座ったまま上半身だけ捻り、後ろを見る。そこには、短めに切られた黒髪、八の字に固定された眉、見えてるのかと突っ込みたくなるほど細められた目、がっしりとした体に汚れた水色のツナギのようなものを着た、体は大きいが肝は小さい、の典型な男がいた。
今、明かりを点けたのは彼なのだろう。
かれこれ二年近くの付き合いだが、これで中々に気が利くところもあることも解っている。
いつも申し訳なさそうな顔をしているが、今は更に、疲れた、という形容詞も追加されていた。
「やっぱり、もっと上級の素材じゃないと……」
私はそんな彼を訴えるように、頭を抱えながら、此処には無い、渇望の品を求めた。
「でも僕のレベルじゃ、これ以上は無理だよ……」
すぐ傍らで弱弱しくそう告げる男。
私よりもレベ
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