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碁神
碁は心の戦いです。
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、自分に言い聞かせるように言い切る。 俺は、今の生活が大事だ。 子ども達が好きだ。 今の生活に、仕事に何の不満も無い。 それ以上を望むなんて贅沢だ。 だから――ちゃんの目を見て言わないと……!

「なぜ――」
「何故も何も、今の仕事がやっぱり一番、ってことさ。 確かにリアルで打つのは楽しかったよ。 ネット碁の魅力が霞むくらいには。 とは言え、お前とはこうして打てるし……そうだ、今度碁会所って所にも行ってみようかな。 行ったことなかったから。 でもまあ、それだけだな。 プロ棋士になる程じゃあ無い」
「……プロ棋士の魅力はそんなものでは無いぞ」
「……関係ないな」
「だったら――」

 不意に美鶴の腕が伸び、顎をとられ強制的に上を向かされた。 途端に美鶴の鋭い眼光に射抜かれ息が詰まる。

「少しはこっちを見て話したらどうだ? 椎名――」
「――っ」

 パンッと美鶴の腕を振り払う。

 反射的に下を向き、少ししてから再び顔を上げて美鶴へ視線を向けた。

「さ、この話はもうおしまい。 それより検討やろうぜ検討。 俺、あまり検討できる相手いなくてさ。 お前との対局の後の検討が結構楽しみなんだよな」

 にっこりと微笑み言うと、明らかに美鶴がたじろいだ。 暑さからか頬を赤く染め、逡巡した後、渋々とではあるが頷く。

「分かった。 だが諦めたわけでは無いからな」
「約束忘れたか? リアル付き合いする条件、『プロになれとしつこく言わないこと』!」
「ぐぅ……!」

 内心では検討を楽しむ気分になれなかったが、表面上は楽しげに笑って見せ早速検討を始める。 まずは直接の敗因となった美鶴の一手から。 自分の敗因だから美鶴も真剣にならざるを得ない。

 ――俺、心理戦得意かも。
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