暁 〜小説投稿サイト〜
『八神はやて』は舞い降りた
第3章 聖剣の影で蠢くもの
第25話 ロストメモリー
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
り、衝撃を受けることを。
 たったそれだけのことで、信仰心が揺らぐことを。
 ボクからすれば、存在する神に祈るほうがおかしいというのに。
 ちなみに、ゼノヴィアは、紫藤イリナの隣で沈黙を保っている。


 ――――人間だけが神をもつ


 神とは超越者であり、人の理解の及ばぬ存在であるべきだ。
 断じて、一派閥の領袖ではない。
 この世界では、ボクの考えこそ異端なのかもしれない。
 だが、違和感がぬぐえないのは、やはりボクが前世の知識を持つからだろうか。 
 まあ神学論など学者に任せればいいことだ。
 信仰は一人一人異なるのだから、ボクがどうこういうべきではないだろう。
 それに――いままさに由々しき問題が発生している。


(ボクは、なぜ紫藤イリナを知らなかった?いくらなんでも覚えていないとは、不自然だ)


 彼女によれば、ボクは日曜日を含め、週に1、2度は必ず会う仲だったそうだ。
 ボクとの色々な昔話を楽しそうに語ってくれた。
 あれこれと考えを巡らす。
 クリスチャンだった父は信心深かった。
 たしかに、同じ信徒ということで、紫藤家とはそこそこ交流があったようだ。
 勝気性格な性格の紫藤イリナに引っ張られながら、遊んだものだろう。
 マルチタスクをフルに活用して――ふと気づく。


(昔の記憶がうまく思い出せない……はっきりと思い出せるのは9歳の「あの日」まで) 


 事件のトラウマから忘れていたのだろうか。
 いままで気づかなかったのも、そのトラウマのせいだろうか。
 気づいたいまでも、漠然とした記憶しか思い出せない。
 全く覚えていないわけではない。
 しかし、具体的な思い出になると途端に思い出せなくなる。
 父がクリスチャンだったことも、紫藤イリナに問われて、なんとなく思い出したに過ぎない。


 「あの日」――父が死んだ9歳の誕生日を境に、記憶がおぼろげになっている。
 いや、こうやって思い出そうと思えば思い出すことはできる。
 昔の記憶だ、忘れていたとしても仕方ない。
 でも、記憶の中の自分を、ボクだと認識できないのだ。
 他人の映画を見せられているような感覚に陥る。
 これではまるで――――


 ――――まるで、ボクが9歳の誕生日以前に存在していないかのようだった。





 哄笑が鳴り響く。


「そうか、そうだった。ボクは―――――」


 嘲笑が場を満たす。


「ほら、助けてやったんだ。ついでに、エクスカリバー2本分の欠片を前払いしよう」


 失笑が漏れ出でる。


「お前は、悪魔陣営ではなかったのか?なぜ私に協力する」


 微笑が相手を魅了する。


「あなたに聞きた
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ