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『八神はやて』は舞い降りた
第3章 聖剣の影で蠢くもの
第25話 ロストメモリー
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よ。教会のミサでよく一緒になったじゃない」


 教会のミサ……ボクはそんなものに出た覚えはない。
 いったい何を言っているんだろう。
 必死になって過去を思い出そうとして、マルチタスクをフル活用する。
 やや時間が経ち、そういえば、ボクの父は、クリスチャンだったことを思い出す。
 なぜ忘れていたのだろう。
 

 思い返してみれば、洗礼こそ受けてはいないものの、父に連れだってよく日曜のミサに出席していた――ような気がする。
 父のこと――亡くなったお父さんのことを思い出そうとすると、いまだに胸が痛む。
 苦しくて苦しくてどうしようもないのだ。
 湧き上がる負の感情を必死に抑えながら、過去を振り返る。


「……覚えていなくて、すまないね。紫藤さん」

「幼稚園のころだしね。忘れていても仕方ない、か。あらためまして、紫藤イリナです。よろしくね」

「こちらこそ、よろしく。八神はやて、だ。神器の保有者として、いまは、グレモリー家の庇護下にある」


 悪魔の庇護下にあると聞いて、眉間にしわを寄せる紫藤イリナ。


「あれ?おじさまは、どうしたの?」

「ああ。いまから説明するよ――」


 ズキンと痛む心を落ち着かせようとしながら、父の最期を語る。
 語りながら、連鎖的に昔のことが思い浮かぶ
 はぐれ悪魔に両親が殺されてからの経緯を説明し終えると、彼女は憤慨した様子だった。
『悪魔ゆるすまじ』と、表情にありありと書かれていて、苦笑してしまう。


「ねえねえ。なら、わたしたち――天使陣営に入らない?強力な神器を保有しているなら、優遇されると思うわよ」

「いや、今の生活が気にいっている。父の思い出があるこの町を離れたくないしね」

「そっか。それなら、仕方ないわね。気が変わったらいつでもいってちょうだい」


 天使、ね。ボクは神も魔王も、もはや存在しないことを知っている。
 現在の魔王サーゼクス・ルシファーたちも、悪魔側の代表を務めているに過ぎない。
 神の不在――これも、原作知識によるものだ。
 居もしない神に祈る気にはならない。


 ――――いや、むしろ神が、存在しているからこそ、敬う気にはなれない


 神も天使も存在しているにもかかわらず、世界から悲劇はなくならない。
 現に、ボクの父を神は助けてくれなかった。
 こじつけかもしれない。
 けれど、彼女がいう「神」とは、数ある神話勢力で最大の力をもつ「聖書の神」のことだ。
 最大勢力のトップというだけで、数ある神の一柱――いや、一人に過ぎない。
 唯一神などと自称しているが、方便にすぎない。
 

 ボクは知っている。
 眼の前の少女たち――紫藤イリナとゼノヴィアが神の不在を知
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