暁 〜小説投稿サイト〜
剣の丘に花は咲く 
第三章 始祖の祈祷書
第四話 錯綜する思い
[5/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
迷惑なんて思ったりしないぞ。反対にシエスタを手伝わずにここから去ったら、シエスタがコケて怪我をしないか心配になってしまって、落ち着かなくなってしまう」
「あっ……は、い」
「それにこれ、所々先が尖ってるからな、下手したら体を傷つけてしまうぞ」
「だ、だったら尚更シロウさんに持たせられませんっ!」

 士郎の言葉に慌てて士郎が持つガラクタを取り返そうとしたシエスタだが、その前に士郎が頭に置いた手をぽんぽんと叩き、シエスタを落ち着かせる。
 頭を軽く叩かれたシエスタは、片手を頭に乗せて、おずおずと士郎を見上げると、苦笑いした士郎がシエスタを見下ろしていた。

「落ち着けシエスタ。そのセリフは俺のセリフだぞ」
「で、でも……」
「ったく。せっかく綺麗な身体なのに、傷がついたらどうするんだ」
「へっ!」
 
 士郎がシエスタに後ろを向け、物置へ向かって歩きだしたが、シエスタは呆然と立ち尽くすだけだ。
 シエスタの頭の中では、先程の士郎の言葉がぐるぐると回っていた。

「き、綺麗……わたしが……綺麗……」




 二十分後、シエスタが我に帰って士郎に追いついた時には、既に士郎が物置の中に入ったところだった。
 シエスタは申し訳なさそうな顔をして物置の中に入り、士郎に近づいていくと、シエスタに気付いた士郎は、ガラクタを片付ける手を止めてシエスタに話しかける。

「ん? シエスタ来たのか? ここは俺がやっておくから、シエスタはもう戻っておいてもよかったんだが」
「そんな……そこまでしていただかなくても」
 
 遠慮の声を上げるシエスタに、士郎は首を振る。
 
「大きいものは結構な重さがあるし置く場所が高い場所もある、シエスタだと怪我するかもしれないからな。俺がやっておくからシエスタはいいぞ」
「そんなっ……それこそ出来ませんっ! この仕事を頼まれたのはわたしですし、さっきシロウさんが言ったことじゃないですが、ここでシロウさんに任せてしまったら。罪悪感で今日の仕事がはかどりませんっ! だからっ」
「ははっ、わかったわかった。別に困らせようと思ったわけじゃないんだ。結構重たいものが多いからな、シエスタがやるには危ないと思ったんだ」

 シエスタの慌てた様子を見て笑った士郎は、一度頷くとシエスタに背を向けてガラクタの片付けを再開する。そして肩越しにシエスタを見ると、ニヤリと笑いかけた。

「それでは、シエスタの精神衛生の安全のため、手伝ってもらおうかな?」
「っ! はいっ!」

 士郎の言葉に勢い良く頷いたシエスタは、物置小屋に積もった埃を巻き上げながら、小走りに士郎に近づいていく。
 その時、シエスタは浮かれる気持ちのまま、周囲を確認せずに歩き出したため、足元にピンッと張っている状態の紐に気づかず
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ