第三章 始祖の祈祷書
第四話 錯綜する思い
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魔法学院の東の広場、通称“アウストリ”の広場のベンチに腰かけ、ルイズは一生懸命に何かを編んでいた。春の陽気が、いつしか初夏の日差に変わりつつある今日だが、ルイズの格好は春の装いとあまり変わらない。この辺は夏でも乾燥しているのだ。
アルビオンから帰ってきて、十日ばかりが過ぎていた。今はちょうど昼休み。食事を終えたルイズは、デザートも食べずに広場にやってきて、こうやって編み物をしているのだった。ときおり手を休めては“始祖の祈祷書”を手に取り、白紙のページを眺め姫の式に相応しい詔を考える。
周りでは、他の生徒たちがめいめいに楽しんでいる。その光景をちらりと横目で眺めたルイズは、せつなげにため息をつくと、作りかけの自分の作品を見つめた。
さてここでなぜルイズが編み物をしているかというと、それには深い? 理由があった。
アルビオンの一件で、ルイズは士郎への恋心を自覚したことから、魔法学院に帰ってきてからずっとルイズなりに士郎にアプローチをかけていったのだが、士郎の反応は芳しくなかった。それでも出来るだけ士郎と一緒にいようとルイズは思い、特に用事が無い時は、ほぼ士郎と一緒にいるようにしたのだが、その結果とあることが判明した。
それは、士郎は狙われているということだったっ!!
そう、士郎は狙われていた……少なくとも3人の相手から士郎は狙われていることにルイズは気付いた。
一人はロングビル――大人の色香を香らせる、大人の女性。魔法学院学院長の秘書を務める程の才女であり、魔法の腕もトライアングルクラスと素晴らしい。なにやら昔、それなりに高貴な貴族だったという噂があり、なるほど、どこか気品を感じさせるミステリアスな雰囲気を持つ女性である。
二人目はキュルケ――言わずと知れたツェルプストー家の女だ。ツェルプストー家は代々、わたしの家、ヴァリエール家の恋人を奪う仇敵である。そのツェルプストー家の女であるキュルケが士郎にコナをかけてきているのだっ! ……でも最近は、なぜかおとなしいのだが、どうしてだろう? ちょっかいをかけてこないのはいいことなんだけど、何故か嫌な予感がするのよね……気のせいだといいんだけど。
三人目はシエスタ――魔法学院にいるメイドの一人なのだが、最近士郎にちょっかいをかけてきているのだ。食事を持ってきたり、稽古をする士郎にタオルを持って行ったり……わたしがしようと思っていたのに……。しかも、あの子は、こ、こともあろうに、士郎の身体にじ、自分の胸をわざと押し付けたりっ! 何あれっ! 当てつけっ!? 当てつけなのっ!!
そういうわけで、わたしは焦っていた……あの三人と違ってわたしには何も無い……ロングビルのような知性も、キュルケのような色気も、あのシエスタってい
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