第54話 「ラインハルトもご機嫌ななめ」
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の運営など、誰にも分からない。知らないのだ。生まれたときから、いや生まれる前から戦争は続いている。
平和というものさえ知らない。
統一国家。
それが現実のものとなろうとしている。
どうすればいい。どうやればいい。
答えは誰も知らない。分からない。
それでもやる。やっていく。そうでなければあの皇太子には勝てない。
ようやくあの皇太子が見ているものの一端が見えたような気がした。
■ブラウンシュヴァイク邸 オットー・フォン・ブラウンシュヴァイク■
私室で一人ブランデーを傾ける。
ラインハルトはまだ、書斎で本を読んでいるらしい。結構な事だ。後で夜食を届けるように言っておかぬとな。年若く脳も柔らかい。物覚えも良かろう。
こうして物思いに耽っていると、様々な思いが揺らめく様に琥珀色の中に浮かんでくる。
ラインハルトに貴族の在り様を教える。
いや帝王学というものを、だ。
なぜ、皇太子殿下がラインハルトを傍に置いているのか?
アンネローゼの弟だからか?
違う。違うはずだ。
皇太子殿下はラインハルトの事をなんと言われた。
ラインハルトには軍事の才能がある、天才と言っても良い。そう言われた。
才能があるのだ。
帝国を動かすほどの。帝国を一変してしまえるほどの才能がある。
だが今のままではダメだ。
今のままではただ壊すしかできない。
新しい帝国を作り出すことができない。新しい帝国の在り様が想像できていない。
これでは皇太子殿下の跡継ぎにはなれぬ。
新しい帝国など私にも分からぬが、それでも未来の帝国。それを動かす陣営ぐらいは想像できる。
おそらく皇帝にはエルウィン・ヨーゼフ殿下がなられるだろう。
帝国宰相はマクシミリアン殿下。
となれば国務尚書はラインハルトだ。
キルヒアイスではラインハルトに遠慮するであろう。いや軍務尚書にラインハルトでも良いな。
それなら国務尚書にキルヒアイスを持ってこれる。キルヒアイスは内務尚書でも良いが。そうなればやはり国務尚書にラインハルトか……。
マクシミリアン殿下、ラインハルト、キルヒアイス。この三人は仲が良い。
うまくやっていけるだろう。
三人がエルウィン・ヨーゼフ殿下を支える事ができれば、言う事はない。
なによりエリザベートにふさわしい男になって貰わねばな。
ブランデーの表面に顔が映る。笑みを浮かべていた。
■ブラウンシュヴァイク邸 ラインハルト・フォン・ミューゼル■
「公爵様、ここにおられたのですか?」
「うん? おおラインハルトか。どうしたのだ?」
俺が部屋に顔を出すと公爵は、ソファーに座り込んでブランデーを飲んでいた。父も酒を飲んでいたが、そんなにおいしいものなのだろうか?
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