第54話 「ラインハルトもご機嫌ななめ」
[2/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
、どれほどの大事なのか理解しておるようだ。結構結構。
「あなた、どうなさったの」
「あっ、ラインハルト」
騒ぎを聞きつけたのか、アマーリエがエリザベートの手を引いて、姿を見せた。エリザベートがラインハルトに気づいて嬉しそうに顔を綻ばせる。
「アマーリエ。ラインハルトは私と共に、自由惑星同盟首都星ハイネセンに向かう事になった。その為の支度が必要なのだ。手伝ってやってくれ」
「まあまあ、そうでしたの」
アマーリエは目を丸くして驚いていたが、ラインハルトに向き直ると、優雅に一礼して見せる。
「アマーリエ・フォン・ブラウンシュヴァイクですわ。初めましてラインハルト・フォン・ミューゼル」
こうして見るとやはりさすが宮廷育ちだ。
身のこなし方が洗練されている。思えば皇太子殿下もそうであった。士官学校時代の皇太子殿下は誰よりも貴族らしくあられた。洗練された優雅さを持ち、マナーも完璧だったのだ。
だからこそ皇太子殿下が貴族の在り様を否定されても、誰もが口を噤まねばならなかった。
貴族というものを説ける者がいないのだ。
「卿が私に貴族というものを説くのか、ずいぶん偉くなったものだな」
そう言い返されるのが目に見えている。
そしていったい誰が、誰よりも貴族らしくあられた皇太子殿下に、貴族の在り様を教える事ができよう。ラインハルトも同じようにならねばならぬ。
貴族を知り、完璧にこなす。それは武器になる。そうなれば誰も逆らえぬ。
その上で、貴族を踏み潰す。
あのお方の悪いところを学ぶ必要はないが、武器は手に入れるのだ。
それを私が教えてやろう。
■ブラウンシュヴァイク邸 ラインハルト・フォン・ミューゼル■
ブラウンシュヴァイク邸に来てからというもの、やる事は自由惑星同盟に向かうための準備だけではなかったのだ。
いやこれも準備の一環なのだろう。
挨拶の仕方。礼の言い方。動作など覚える事は多々あった。
ブラウンシュヴァイク公爵は二言目には武器を手に入れろと言う。何の事だと思ったが、貴族を相手にしていくために必要な事なのだとすぐに気づいた。
思えば公式な席であの皇太子が同じように行動していた。
誰よりも貴族らしく振舞える。貴族にとってはやりにくい相手なのだろう。
貴族の常識を持って逆らえない。
貴族は、貴族というものは、などと皇太子の前では口が裂けても口にできない。
それを誰しもが理解している。
そのような者になれとブラウンシュヴァイク公は言っている。
「貴族というものを知らずして、動かすのではない。知った上で踏み潰すのだ」
そうでなければ、気づかぬうちに強かな貴族の思惑に嵌ってしまうぞ。
そうブラウンシュヴァイク公が言う。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ