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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第54話 「ラインハルトもご機嫌ななめ」
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、どれほどの大事なのか理解しておるようだ。結構結構。

「あなた、どうなさったの」
「あっ、ラインハルト」

 騒ぎを聞きつけたのか、アマーリエがエリザベートの手を引いて、姿を見せた。エリザベートがラインハルトに気づいて嬉しそうに顔を綻ばせる。

「アマーリエ。ラインハルトは私と共に、自由惑星同盟首都星ハイネセンに向かう事になった。その為の支度が必要なのだ。手伝ってやってくれ」
「まあまあ、そうでしたの」

 アマーリエは目を丸くして驚いていたが、ラインハルトに向き直ると、優雅に一礼して見せる。

「アマーリエ・フォン・ブラウンシュヴァイクですわ。初めましてラインハルト・フォン・ミューゼル」

 こうして見るとやはりさすが宮廷育ちだ。
 身のこなし方が洗練されている。思えば皇太子殿下もそうであった。士官学校時代の皇太子殿下は誰よりも貴族らしくあられた。洗練された優雅さを持ち、マナーも完璧だったのだ。
 だからこそ皇太子殿下が貴族の在り様を否定されても、誰もが口を噤まねばならなかった。
 貴族というものを説ける者がいないのだ。

「卿が私に貴族というものを説くのか、ずいぶん偉くなったものだな」

 そう言い返されるのが目に見えている。
 そしていったい誰が、誰よりも貴族らしくあられた皇太子殿下に、貴族の在り様を教える事ができよう。ラインハルトも同じようにならねばならぬ。
 貴族を知り、完璧にこなす。それは武器になる。そうなれば誰も逆らえぬ。
 その上で、貴族を踏み潰す。
 あのお方の悪いところを学ぶ必要はないが、武器は手に入れるのだ。
 それを私が教えてやろう。

 ■ブラウンシュヴァイク邸 ラインハルト・フォン・ミューゼル■

 ブラウンシュヴァイク邸に来てからというもの、やる事は自由惑星同盟に向かうための準備だけではなかったのだ。
 いやこれも準備の一環なのだろう。
 挨拶の仕方。礼の言い方。動作など覚える事は多々あった。
 ブラウンシュヴァイク公爵は二言目には武器を手に入れろと言う。何の事だと思ったが、貴族を相手にしていくために必要な事なのだとすぐに気づいた。
 思えば公式な席であの皇太子が同じように行動していた。
 誰よりも貴族らしく振舞える。貴族にとってはやりにくい相手なのだろう。
 貴族の常識を持って逆らえない。
 貴族は、貴族というものは、などと皇太子の前では口が裂けても口にできない。
 それを誰しもが理解している。
 そのような者になれとブラウンシュヴァイク公は言っている。

「貴族というものを知らずして、動かすのではない。知った上で踏み潰すのだ」

 そうでなければ、気づかぬうちに強かな貴族の思惑に嵌ってしまうぞ。
 そうブラウンシュヴァイク公が言う。

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