第七章
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第七章
「この人は」
「うん、それは確かだよ」
ジョージは顔を一気に晴れやかにさせてウィリアムに答えた。
「それはね。間違いないよ」
「間違いないか」
「とても優しくて気立てがよくて家事も凄く上手くて」
「しかも裏表がない」
今度言ったのはジョージだった。
「そうだな」
「その通りだよ。そこまでわかるんだ」
「御前の目も知っているが私の目にも自信がある」
「兄さんの目も」
「伊達に。ここまで生きてきたわけではない」
言葉には出さなかったが彼は貴族の社会で実に多くの人間を見てきた。権謀術数も渦巻く貴族の世界を。だからこそ言えた言葉だったのだ。
「だからだ。わかる」
「そうだったんだ」
兄の言葉を静かに聞いていた。
「それで僕達のことを」
「その通りだ」
「けれど。いいの?」
今度は心配そうな、おずおずとした声で兄に尋ねてきた。
「それで。本当に」
「何が言いたい」
「私自身のことです」
キャサリンが俯いたまま小さな声でウィリアムに言ってきた。
「貴女のことか」
「はい。私は」
ここで自分から彼女自身のこと告げるのだった。
「先程にも出ましたが」
「確か」
「私はスコットランド人です」
まず言ったのはこのことだった。彼女はイングランド人ではない。当時のイギリス社会ではスコットランド人やアイルランド人、ウェールス人はイングランド人よりも下に置かれていた。このことを彼女もよく知っていたのだ。その下に置かれている人間だからこそである。
そしてキャサリンは。さらに言うのだった。
「私は貴族ではありません」
「ふむ」
「平民です」
このことも自分から告白した。
「靴屋の娘です。ですがこの方も貴方も」
「それを言われるのですね」
「その通りです」
また語るキャサリンだった。
「ですから。この方には」
「相応しくないと仰るのですね」
「スコットランド人の、しかも平民の私が」
声はさらに小さく泣きそうにさえなっていた。
「この方と結ばれるなんて。やっぱり」
「それがどうかしましたか」
しかしウィリアムはその俯くキャサリンに対して不意に言うのだった。
「それが。どうかされましたか」
「どうかされましたかとは」
「貴方のことはよくわかっています」
ここでも言うのだった。
「それはもう」
「ですが」
「御存知と思いますが」
怖気付いた様子を見せるキャサリンに自分から言ってきた。
「ジョージは我々の世界では暖かい目で見られてはいません」
「お母上がですね」
「そうです。だからです」
このことをキャサリンに対しても話したのだった。
「同じなのですよ」
「同じ・・・・・・」
「平民だからといっても貴族だからといっても」
今言
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