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兄弟
第五章
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っている。シェフに作らせた羊肉の料理を食べながら弟に対して言ったのである。
「そうだな」
「うん、やっとね」
「それは何よりだ」
 ジョージからの言葉を聞いてまずは微笑むのだった。
「そういえば聞いたのだが」
「どうしたの?」
 ジョージは確かに彼と同じ髪と目の色だが周囲に与える印象は全く違っていた。兄とは違い髪は短く顔も鋭利なものではなくやや童顔で温厚なものだった。何処か中性的でそれが彼を優しい印象に見せていたのである。服も赤いベストにズボン、ネクタイ、それと白いブラウスで兄よりはかなり大人しい服装である。
「かなり優秀な成績だったそうだが」
「いや、別にそれは」
「隠さなくていい」
 肉を切りながら弟に対して微笑むのだった。
「首席だそうだな。何よりだ」
「まあそれは」
「いいことは隠さなくていいのだ」
 言葉が少し説教じみていた。
「御前にとっていいことなら尚更な」
「それはそうだけれどね」
「そういうものだ。そしてだ」
 ジョージに対してさらに問うてきた。
「これからどうするのだ」
「これから?」
「そうだ。まず大学を出た」
「うん」
「その後まず爵位を授けられる」
 このことも彼に伝えた。
「男爵位をな。だがそれで終わりではないのだ」
「どうして務めを果たすかだね」
 二人はここでは収入のことは気にしてはいなかった。大貴族であるのでそうしたことは一切気にせずに暮らしていけるのである。そうした意味では有り難い立場である。
「これから」
「そうだ」
 はっきりとした声で弟に答えたのだった。
「その通りだ。励むようにな」
「うん。ところでさ」
 ここでジョージはふと言ってきた。
「兄さん、一つ聞いていいかな」
「何だ」
「兄さん。結婚はしないの?」
 こう兄に問うのだった。
「まだ。もう三十も超えて」
 それでも美貌はそのままだ。相変わらず毅然とした美しさを持っているウィリアムである。赤い髪の艶も実に映えている。若々しいと言ってもいい。
「まだなの?」
「そういえばまだだったな」 
 ふと気付いたように答える兄だった。
「それはな」
「そういえばって何か他人事じゃない」
「私にとっては今はどうでもいいことだ」
 そしてこう弟に言うのだった。フォークとナイフを使う手も全く動揺している様子はない。顔色もそうであり本当に何とも思っていないことがわかる。
 だがそれでもジョージは。兄に対して問うのであった。
「それでもさ。やっぱり」
「結婚する気はある」
 一応は、といった返答であった。
「それはな」
「けれどしないんだ」
「今はな」
「今はって」
 やはりジョージにとってはどうにも納得のいく返答ではなかった。
「何で今じゃないの?それは」
「そう
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