序文
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「すみません!すみません!あの、大丈夫でしたか!?」
「いや〜、姉貴の弁当がひっくり返った以外は何とも」
「あわわわわ、お弁当ひっくり返しちゃったなんて……ごめんなさい、ごめんなさい〜!」
「いえいえ……」
頭を上げると、こげ茶色のロングヘアーに、豊満とは言い難い肉体を白衣で包んだ女性が座り込んでいた。涙目になってペコペコ頭を下げているさまは、なんとも俺の好みにドストライクであった。何この女神。
そんな俺と女神の邂逅を邪魔する影が一つ。
「どうしたの茅場ちゃん!大丈夫?あれ?正樹?何でここに……ってなんじゃこりゃ!!」
この場で俺……峠正樹の名前を知っているのは、姉である峠岬樹だけである。顔を上げると、案の定そこには手入れのされていない外見に、やぼったいメガネをかけた白衣の女が。間違いなく姉貴である。
「あ、岬樹ちゃん……」
「ちょっと正樹。茅場ちゃんにナニカしたんじゃぁないでしょうね」
「んなわけあるか!!大体だな……ん?」
そこまで叫んで俺は、姉貴の言葉に何か聞き覚えのある名前があった気がすることに気が付いた。思わず姉貴に聞き返す。
「……なぁ姉貴?いま、《茅場》って言った?」
「ん?言ったけど……あっ、しまった!あたしと茅場ちゃんだけの秘密だったのに……」
「良いよ良いよ岬樹ちゃん。いつかばれることだったわけですし」
ほわほわと姉貴をなだめる女神。ちょっとまて。茅場?
「茅場って……茅場晶彦?」
「そうだよ。天才科学者茅場晶彦。ただし、その正体はご覧の様に可愛いドジっこ娘なのだ。ねー、茅場ちゃ〜ん」
「か、可愛いだなんて、そんな……それに私なんて天才でも何でもないですよ〜」
その時、俺の脳裏に大分前から引っかかっていた疑問がよみがえり、そしてついにその答えが出た。
《アーガス》。2022年現在で(ちなみに今は2020年)、もっとも世界で名をはせるゲーム会社。天才科学者、《茅場晶彦》を擁し、2021年末には家庭用VRゲームハード、《ナーヴギア》を発売、良く2022年11月に世界初となるVRMMO《ソードアート・オンライン》を発売し、SAOデスゲーム化に伴って倒産する……。
なぜ今まで気づかなかったのだろうか。ここは、『ソードアート・オンライン』の世界だ。だが、なぜ茅場晶彦が女……!?
思えば、茅場晶彦は様々なゲームを開発しておきながら、メディアには一切顔を出さなかった。だからこそ、SAOの世界では茅場晶彦のインタビューは非常にレア度が高かったのだ。
そして恐らく、この世界ではそれは「性別を偽っているため」だからなのだろう。
だが……しかし……この衝撃は、非常に大きい。
「
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