城島 冥星は人生を謳歌する
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」
「あ、おい……」
実はもう一人この夕食には席を共にしている者がいたのだが、黙々と食事をとっていたため敢えて紹介を控えていた。
冥星の妹である、海星だ。兄と同じく白い髪。それを肩まで伸ばした学校でもかわいい子ランキング一位を争うほどの人気がある。もっとも、兄の方は彼氏にしたくない男ランキング一位を争っているから泣ける。
「……なんだよ、飯はあげないぞ」
「死ね、くそ兄貴」
バタンと勢いよく絞められた襖を一瞥したあと、冥星は己の食事に戻った。妹の罵倒などなんら気にすることはない。そんなことでは腹は膨れないし、どうでもいいからだ。
「……お前たち、昔からあんな感じなのか?」
「なんだよ、母さんのくせにそんなこともわからないのか」
「……このっ、私はなっ!」
「いいんだよ。めんどくさいからこのままで。別に今更仲良くなろうとかキモいでしょ。それに、兄妹ってこんなもんだよ」
「……お前はそれでいいのか?」
「いいよ、別に。俺は、何も感じないし、何も気にしない」
黙々と丼に盛った米を胃に叩き込む。その食欲には、明子も感服するほどだ。冥星という少年はとにかく食う、寝る、食う。それでいて、食った分は動こうとせず、寝た分はまた寝るまでごろごろしている。一言でいえば怠け者。二言で言えば、社会が生み出した屑である。
面倒なことに、少年は自らが社会のゴミだと気が付いていることだ。それでいて、屑の王、「カリスマニート」とやらを目指しているから本当に、殺したくなってくる明子だった。
「見ろ、海星の通信簿だ」
「おお、オールファイブ」
「そしてこれが貴様の通信簿だ」
「ナンバーワンにならなくていい。もっともっと特別なオンリーワン」
「死ね!」
「暴力反対!」
たかが通信簿如きがなんだというのか。所詮、大人が判定した独断と偏見による評価ではないか。ああ、だが悲しいかな。それこそが現代における子供たちの価値観なのである。個人としての評価など一ミリたりとも役に立たない。親はかみっぺらを見ながら自らの子供の成長を見届けるしかないのだ。やがて、子供は個々としての特性をなくしていき、会社は学歴で評価し、ニートは社会のクズだと決めつける! 最低の世の中だ!
冥星は丼に突っ込んだ顔を根性で起き上がらせ、天敵、秋坂明子の顔を睨み付けた。
文句の一つでも言ってやろう。実際この女は暴力だけで口なら自分の方がいくらでも回る。たまには本気で泣かせてやることでどっちが上なのかわからせてやることも必要なのではないか。
そう思い、冥星は口を開こうとした。
「うっ……うっ……うっ……」
「もう、泣いている、だと!?」
明子は口を押えながらよよよと体を崩し、ボロボロと大粒の涙を流していた。さすがに冥星もその姿に
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