城島 冥星は人生を謳歌する
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ははははははは! 相変わらずバカだなお前は!」
「……そういう隼人はなんて書いたんだ?」
「俺? 聞きたいのか? どーしよっかな〜!」
「めんどくさっ! いいよやっぱ聞かない」
「大統領だ! すげーだろ!? プレジデント! プレジデント篠崎はやーと!」
「出たよ、単細胞。でも、それなら別に怒られることじゃないよね?」
「んにゃ、大統領が何していんのかわかんねーから、とりあえず世界征服しますって書いた」
「……だろうね」
なぜこんな男と共にトイレ掃除をしなくてはならないのか。なぜこんな男と同じ息を吸わなくてはならないのか。世の中は間違ってばかりだ。そんな些末なことを考えていたらきりがいないことはわかっている。だからこうして冥星は悪友、篠崎隼人と共に悪臭漂う便所掃除に勤しむ。もちろん、自分はバカなどでは決してない。バカは目の前の下品な男だけで十分なのだから。
「でも、お前、よくあんなくだらねーことつらつら難しい言葉で書けるよな! そこだけは尊敬するぜ!」
「……なんだと? 隼人、もう一度言ってみろ」
さすがの冥星もその言葉にはカチンときた。何がくだらないだと? 自分の夢をくだらないと一周するバカに冥星は怒りを覚えた。自然と体は相手へ接近する。デッキブラシを前方に固定し、態勢を整えた。
「てめーの夢が、くだらねぇっつたんだよ」
隼人は冥星を嘲笑いながらデッキブラシを片手に担ぐ。怒り狂った獣を仕留める狩人のような目つきで敵を睨み付けた。
既に雌雄は決している。己と悪友の道は違えた。ならばやることはただ一つ。
「はぁぁぁやぁぁぁぁとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「めぇぇぇぇいぃぃぃぃぃせぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
鳴り響くデッキブラシの打ち合う音。戦士たちは己の任務を忘れ、ただ本能の赴くままに敵へとぶつかる。実はちょっとめんどくさくなっていたが、始まってしまった戦いを中断することは決してできない。いや、別にできるが、男としてそれはどうかと思うわけで。
「いいかげんみとめちまえよ! お前はバカだって!」
「絶対に! お前にだけは言われたくないわ!」
「んだとぉぉぉぉぉぉ!?」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
なんだかんだで楽しい。間違いなく隼人のほうが数倍バカであることは事実なのだが、このやりとりを心地よいと思っている自分も確かにいるわけで。
こんな生活も、悪くない。そう思い始めている自分が、いた。
※※※※※※
「言いたいことは、それだけか?」
「なに? 何か文句でもあるの? 悪いけど食事中だから。食事中は私語を慎めという城島家の掟に従い、俺はこれから何もしゃべらないぞ」
「秋坂流、奥義、熊殺し」
「ぐぎぎぎぎぎぎぎ……ただの絞め技じゃないか……」
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