第十話 初陣
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隊長が顔を上げる。
少し訝しげな顔をしているように見える。
「なぜ、そう言い切れるのですか?」
「はっ、もう少し勉強が必要だな。轟。」
声に侮蔑が含まれている。
「いいか、ここの地形は今、お前が説明した通り、両岸に崖があり、その間を川が流れている。つまり、開けているんだよ、そこは。そんなとこを人が通ってみろ?すぐ分かるだろ。」
開いている地図の川の部分を、すーっと指でなぞる。
「さらに、この地形はここまで続いている。これを迂回してまで回り込むというのもあり得ないだろう。」
な、わかったか?というような顔で轟隊長を見ている。
轟隊長は・・・びっくりしたように呆けている。
・・・なんて楽観的なんだ。
たったそれだけの理由でそこまで言い切れるだろうか。
そう、僕は思ってしまった。
そして・・・
「楽観的ですね。相手は岩隠れ、土遁を得意とする忍ですよ。」
堪えきれずに、つい声に出してしまった。
「あ?」
睨まれた。
「イナリ!」
隣にいたハナが僕の肩を掴む。
僕は一度ハナの方を見て、大丈夫だよと言って、微笑んで肩から手をどけた。そしてもう一度、あさのは隊長の方を見る。
「敵が必ず地面の上を通るとは限りません。もし、地面を潜るなどして川を渡り、攻撃部隊の裏を取ろうとしている敵部隊がいれば、私達は敵部隊に突っ込むようなものです。」
「はっ、下忍でもないアカデミーの生徒が生意気な!敵は丸一日戦っていたのだぞ?そんな気力はない!」
あさのは隊長の目が鋭くなっていく。
「ビビってばかりでは何もできんぞ、くそガキ!状況を多角的に認識し、大胆に行動する。わかるか?・・・お前はただ怖がっているだけだ。」
「確かに・・・僕は怖いですよ。初めての戦場だし、自分の力に自信だってありません。でも、大切な人を失いたくないから、必死に考えているんです! とても・・・隊長のように楽観的にはなれません。」
大切な人・・・その言葉を口にするだけで胸が苦しくなる。
もう、あんな思いはしたくない。
「はっ、何が大切な人だ・・・戦場も知らないガキが。お前は自分の妄想に酔っているんだよ、悲劇のヒーローみたいにな。」
バンっ
隊長が近くにあった木の幹を拳で殴る。
「戦場において、さらには忍として、そんな感情は不要だ。今の時間、天候、地形、敵状、それらを総合的に見て考える。どうだ? 俺の考えが正しい。そうだろう? 轟」
きっ、と轟隊長の方を見る。
目には、否定など許さないと書いてある。
「お前は俺の後輩だ。俺の考えが分かるだろ?」
轟隊長はぎゅっと目をつむり、ゆっくり開け
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