暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜慟哭と隔絶の狂想曲〜
冥王の堕日
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ふと気が付くと、腕の中は空っぽになっていた。
胸中を満たす、あまりにも深い喪失感に、レンは自分でも面食らった。
なぜだ?
なぜこんなにも寂しい?
たかだか昨日出会っただけだ。長年コンビを組んでいたとか、よく見知った仲などでは断じてない。
だいたい、自分は彼女のことを何一つ知らないではないか。恋人だったという、自分が殺したという
殺人者
(
レッド
)
のことも、彼女自身の過去のことも。
何一つ、知らないではないか。
なのに、それなのに。
寂しい。
どうしようもなく
抗えないほどに
寂しい。
「……ぅ………、あぁ…ぁ…………」
うずくまり、嗚咽を漏らすレンの耳が、かすかな破砕音を捉えた。
それはとても小さなものだったけれど、空気に、大気に、空間に響いた。
顔を上げると、花びらのうちの一枚に大きな亀裂が走っていた。しかしそれは、外部――――ドラグラのメンバー達の攻撃によって付けられたものではない。
内部。
この花びらで形作られた心意が、もう限界を迎えているのだ。
レンは立ち上がろうとした。
戦うために。
殺しあうために。
しかし、できなかった。
この状況からの脱出は、レン個人にとってはそんなに難しいことではない。この
蕾
(
つぼみ
)
が消えた瞬間に両足に力を込め、群がる集団の頭上を飛び越える。あとは主街区に逃げ込めさえすれば、オレンジカーソルを有する彼らには手出しができないのだ。
しかし、もう生きる意味はあるのだろうか?
リータは消えて、いや死んでしまった。
また独りぼっちになってしまった。
ここから生きて帰り、ソロプレイヤーに戻ってまた血塗れの世界に飛び込んでも、何になるのだろう。結局、またこの手は、大切になりかけていた人を守ることができなかったのだから。
守り、護りきる事が、できなかったのだから。
ピキッ、バキリ……
花びらが、見た目の柔らかさとは裏腹に硬質な悲鳴を響かせる。
狂った男達の口元に、粗野で下卑た嗤いが一様に浮かぶ。
それをぼんやりと眺めながら、レンはふと考えた。《冥王》と呼ばれた部分が、ひっそりと悪魔の囁きを放つ。
―――こいつらは、リーダーが死んだというのに、なんでまだ僕を狙うのだろう。
答えは簡単だ。
彼らには矜持があるのだ。
リーダーを殺されても敵のノド笛に喰らいつく、野獣のプライドが。
精神は、心は拒否しているのに、プライドが邪魔をする。
逃げたいと叫んでいるのに、血に狂った体が勝手に動く。
―――こいつらは、リータが死んだというのに、何でまだ生存している?リータを、矢車草の花を無残に踏み荒らしたのに、それなのになぜ呼吸をしてい
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