決戦3
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この次はない。
死ぬか。
そう自問すれば、その可能性は非常に高いように思われた。
物語の世界に生まれ変わり、そして、最初の戦場で散る。
それは随分と。
「どうかいたしましたか」
問いかけられた言葉に、振り返れば小銃を持ったバセットがいた。
「いや、どうも」
「そうですか。随分と楽しそうだったので、何か名案が浮かんだのかと」
「楽しそう?」
そう言われて、アレスは自分の顔に手を置いた。
流れた血が乾いて硬くなった包帯。
左半分が包帯で巻きついていれば、表情などわかるはずもない。
しかし、部下としては怯えるよりも、むしろこの状況下においても笑みを浮かべる指揮官の方が信頼できるのだろう。
集中する視線は、何かを期待するような視線であった。
絶望で死ぬよりは、マシか。
「雪が止んで、敵は対空部隊の編成を中止したようだ。これで救援部隊が撃たれることはないさ」
「だから、後方部隊に集中砲火を」
答えずに、アレスは前を向いた。
救援部隊が来るかどうかはわからない。
だが、この状況でアレスに出来る事は終わった。
ならば。
「あとは味方の来援を待つだけだ。それまで、死ぬなよ?」
呟かれた最後の命令が、同盟軍の兵士達を奮い立たせた。
押し寄せる敵の声に負けぬように、一人が声に出した叫びが伝播していく。
兵士達の目にはもはや絶望はなく――。
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