決戦3
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ろで失敗した。
前線からは続く作戦を尋ねる伝令が走る。
突撃の継続を求める声。
後方部隊の再編成についての声。
声、声、声。
戦場では一瞬一秒の判断ミスが、作戦を瓦解に導く事をマーテルは知っている。
もっとも王手まであと少しというこの時点では、そこまでの至急はないだろうが。
しかし。
「大佐がどこにいったのか、まだわからぬのか」
「は。所用のため席を外すとおっしゃり、まだ帰ってこられません」
「所用だと。この戦場で大佐に護衛もつけず、どこにいったかも把握をしておらんのか」
「申し訳ございません。それは機密事項であるとおっしゃられ」
「ならば、所用ではないではないか。所用を辞書で調べ直せ、馬鹿者」
マーテルの怒声により、大佐付きの兵士達は背筋を伸ばした。
さらなる怒声が浮かぶが、マーテルは言葉にせずに唇を噛んだ。
兵士ばかりを攻められるものではない。
基地司令官から機密事項であると言われれば、マーテルですらも深くは聞けない。
独断専行はこれが初めてではないが、困った癖であることは間違いがなかった。
「第32中隊、敵が回復する前に再度の突撃を行いたいとの伝令、許可を」
「第21中隊。突撃前に再び後方に対空砲火部隊の設置許可を求めています」
様々な声はあれど、大まかに分ければ二通りだ。
即ち、攻撃か防御。
予想以上の敵の反撃に、こちらの対空部隊は満足な編成を行えていない。
その再編成を求める声が一つ。
もう一方はこのまま敵陣に対して攻撃を仕掛けるというものだ。
どうするかと、周囲を見渡せば指令部での最上位はマーテルしかいない。
誰もがマーテルの返答を待っている。
大佐が来るまで待つか。
そう思いかけて、いやとマーテルは首を振った。
「こちらが時間をかければ、敵はさらに防備を厚くするだろう。ならば時間を与えず、全部隊で徹底的に攻め込め」
「はっ」
走り出す兵士を背にして、マーテルは息を吐く。
マーテルは決して敵を――いまは名も知らぬアレス・マクワイルドを侮っているわけではなかった。むしろ、敵ながらアレスを認めていた。
だからこそ下した命令。
それは瞬く間に最前線に伝わり、同盟軍を食い破る獣となった。
+ + +
突撃部隊の後退から、半刻も待たずして同盟軍の前線基地に押し寄せる部隊がある。
総力戦と言わんばかりの人数に、塹壕から身を乗り出して、アレスは息を吐いた。
元々が分の悪い賭けだ。
見上げる空は雪こそないものの曇天が広がり、いまだ味方の来援はない。
敵はこの戦いで決着をつけようとしている。
そうでなくても、アレスが率いる隊に残された銃弾は少ない。
体力も限界だろう。
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