After days
挿話集
妖精達の凡な日常B
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4人が同時に立てるぐらいの広さしかない。飛行制限が無くなったアルヴヘイムでこんな所に展望台がある理由は不明だが、いづれにせよここはあまり人が来ない。
「綺麗です……」
手を取り合って降り立ったそんな小さな展望台から夜のアルンの街並みを見下ろす。
雑貨店や露店商、宿やレストラン、街灯から漏れる様々な色の灯りがアルンを彩っていた。アルンを囲む水路もそこを航行する船と街の光を受け、光のリングのように煌めいている。
「シウネーさん、あっちを見て下さい」
「……!あ、あの湖は……」
「先程行った所ですね。こうやって見ると随分と小さく見えますが」
「何だか……少し緑色に見えませんか?」
「そう言えば……あ??」
突然あげた声にシウネーが驚き振り返ると、セインとシウネーの間に翠色の球が2つ浮いていた。
「これは……」
「さっきの魚の鱗……?」
翠色の球はまるで生きているかのように鼓動し、光り続けている。視線を戻してみれば湖もまた同色の光がまるで共鳴しているかのように輝いていた。
やがて光が収まり、2人の手にそれぞれオブジェクトが落ちてきた。
緑がかった水晶のリング、その奥からは光の粒が次々と湧き出ては消えていた。
「……そうゆう事か」
「え?」
「いえ、こちらの話です。…………シウネーさん」
「え、あ、はい??」
彼にこの穴場スポット……もといデートスポット巡りを細かく、順番通りに進ませるように理詰めを交えながら吹き込んだ2人の意図はつまりはこのためなのだろう。
どうしようもない世話焼き、いや、お節介というか、何というか……。
彼らだって忙しいのだろにここまでわざわざお膳立てして貰ったのだ、彼らの善意に報いる為に、自分の為にしっかりと応えねばなるまい。
「僕は……貴女の事をもっと知りたいです」
「??……え、あ、あの……」
「本気です。シウネーさんの事も、名前も知らない貴女の事も!」
「っ…………」
シウネーは手の中のリングを握り締めると、俯いて肩を震わせた。
「っ……セインさん……」
「はい」
「私は……っ??」
「わっ……??」
何かを耐えかねるように声を詰まらせた彼女はセインの胸に抱きつき、静かに泣きはじめた。普段おしとやな様子からは想像出来ないその行動にセインはしばしの硬直を強いられる。
空と地上が光に彩られる中、可憐な妖精はようやくたどり着いた止まり木に掴まり、長く、苦しい孤独を終わらせようとしていた。
数週間後。
「ね、螢」
「んー?」
「シウネーとセイン、最近どうなの?」
「ん……何でもこの間リアルで会ったらしいぞ。仲良くやってるみたいだ」
「そっか。ジュン
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