オリジナル/未来パラレル編
第13分節 写真のナゾ
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納戸の前でダンボールを次々開け、中身を見ては放り出す。室井咲はそんなことを忙しなくくり返していた。
廊下には多種の荷物が放り出され、足の踏み場を奪っている。
(何かないの。何か、オトナのあたしのことが分かる物)
咲が記憶退行になってから1週間が過ぎた。記憶は一向に戻る気配を見せない。焦れた咲は、自ら現在の自分に繋がる品を探すことにした。
室井咲は「思い出」を重んじている。「咲」はどうだか知らないが、最低でもダンススクールとビートライダーズにゆかりの品は取っておいてあるはずだ。
そしてついに咲は、ダンボールの中から見つけ出した。
差し入れで貰うような菓子の四角缶の中に、写真がぎっしり詰まっている。その一番上の写真を摘み上げた。
小学校の校門前でモン太、チューやん、ナッツ、トモと並んで映っている。ヘキサがいないのは、小学校が違うから納得がいく。
写真の中の自分たちは進学先の中学の制服を着ていたが、咲だけ彼らとは別の制服だ。
(わざわざみんなと違う学校に進んだの? あたしが? 何で?)
さらに四角缶を漁った。だが、中学校に上がってからと思しき写真が1枚も見つからない。
スマートホンを取って画像フォルダを開こうとすると、「No Date」の表示が点いた。この機種にしてから1年、室井咲は写真を1枚も撮らなかったことになる。
アイコン一覧を戻し、メールのアイコンに親指を持って行こうとして、咲は指を止めた。
「――――」
スマートホンを放り出して居間に戻った。
本棚を覗き込む。卒業アルバム、あるいはデータ、そういう物を探した。そういう物がある、と確信しているのは記憶が少しでも戻ったからか。
「あった! ――ええっと」
中学の卒業アルバムを床に置いて開く。クラスメートは知らない顔ばかり。
(ヘキサが行く学校だから行ったのかと思ったけど、そうじゃないのかな。ヘキサは確か市内で一番レベル高い進学校に行くって言ってた。ここの学校、あたしの記憶じゃ上から4番目くらいだけど、何でそんな中途半端なレベルの学校に行ったんだろ)
中学の卒業アルバムを端に放り出し、次に高校の卒業アルバムを取って開けた。
高校は並みのレベルの学校だった。先と変わらず、知らない顔ばかり。咲はさらに首を傾げた。
何気なく首を巡らせる。本棚の上に置いた時計が目に入る。
短針が12時を回っていた。
「やば…っ」
咲は慌てて立ち上がった。記憶のこともあり、咲はしばらく昼からの出勤でいいと紘汰が配慮してくれた。咲にとっての出勤は13時。今から準備してギリギリ間に合うかというところだ。
クローゼットを開けて服を選ぶ。「咲」は咲と違ってスカート派、し
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