暁 〜小説投稿サイト〜
Yuruyuri4 the NOVELIZATION
Requirement of HERO
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年以上通っている場所なのに、今目の前にある学校は、何故か自分の見知らぬ場所のような気がしてならなかった。
「あ〜はっはっは! よく来たね、二人共!」
 校舎の前に広がる校庭。普段、運動部が放課後に汗水流して練習を行っているその場所に、京子とあかり以外の何者かが立っていた。
「あれは……!」「あ、あかり?」
 どういうことか、モノクロの校庭の真ん中に立っていたのは、京子の隣で唖然(あぜん)としているあかりとほぼ同じ姿をしている少女だった。特徴的な赤い髪も、頭のお団子も、くりくりとした大きな目も、あかりと何一つ変わらない。違うところと言えば、お団子にしてもなお腰の辺りまで伸びている長い髪と――
「そう。私は赤座あかり。コミック百合姫にて絶賛連載中の大人気コミック『ゆるゆり』の主人公にして、七森中娯楽部をまとめるリーダーよ!」
 隣にいるあかりには全く見当たらない圧倒的とも言える存在感だった。
「ど、どういうこと? だって、あかりはちゃんとここにいるのに……」
「私もあかりだよ、京子ちゃん。正真正銘の、ね」
 現在のあかりとは似ても似つかないほど余裕のある口調に、京子は隣にいるオリジナルのあかりに何とか言うよう促してみたのだが、
「か、かっこいい〜! あれ、本当にあかりなの? 何だか夢みたい〜!」
 本人とは正反対の主人公体質なあかりをうっとりと見つめるだけだった。
「ありがとう。自分自身からそう思われてるなんて光栄だよ。さあ、あかり。私と一緒に来て。存在感がなくバカにされるだけだった君を、本当の主人公にしてあげる」
「ほ、本当? あかり、あんな風になれるんだ……」
 あかりは主人公らしい自分自身を思い浮かべて恍惚となりながら、偽あかりのもとへふらふらと歩いていく。そこには何の考えもない。「主人公らしくなれる」というあかりにとって最も魅力的な誘惑がその足を動かしているのだ。
「ダメだ、あかり! アイツの誘いに乗っちゃだめだ!」
 京子の呼び掛けに、あかりは足を止めて彼女の方を振り返る。
「どうしたの、あかり? 主人公になりたくないの? ずっと悩んでたじゃない。主人公なのに出番が少ないって、扱いが悪いって」
 足を止めるあかりに、偽あかりは言葉を重ねる。
「だからさ、見返してやろうよ。あかりをバカにしてきた人達を。もう誰にも『アッカリーン』だなんて言わせない。あかりが、この『ゆるゆり』の中心に君臨するんだよ」
 あかりは彼女の(つむ)ぐ言葉に何度も(うなず)きながら再び歩き出す。その様子は、神の生まれ変わりだと自称する新興宗教の教祖に心酔し切っている信者そのものだった。
「あかり、戻ってこい! あかりぃ!」
「耳を貸しちゃだめだよ、あかり。京子ちゃんは怖いんだよ。主役の座をあかりに奪われて、昔みたいな泣き虫の自分に戻る
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