暁 〜小説投稿サイト〜
Yuruyuri4 the NOVELIZATION
Requirement of HERO
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なら、化け物以外の言葉は見つからなかった。巨大な(くちびる)に二本の足が生えているだけという、およそ地球上に存在する生物としてはありえない姿形をしている――見ようによっては、某有名ロックバンドのロゴマークに見えなくもないが。
「な、何あれぇ〜!? 何か、こっち来るんだけど〜!」
 化け物は一体だけではない。周囲にある様々な建物の陰からまるで虫か(ねずみ)のように何十体も()いて出てきていた。
「下がってて、あかり。あかりは絶対私が守るから」
「京子ちゃん……」
 巨大な唇を開けて(みにく)(よだれ)を垂らしながら迫る化け物に、京子は逃げる素振りも見せず、あかりを背中に(かば)うようにしてその群れと対峙(たいじ)する。
 彼女の手には一枚のカードが浮かんでいる。(がけ)の縁に立つ陽気な男が描かれたそのカードは半透明で、青白い光を放ちながらくるくると京子の(てのひら)の上で回転していた。
(――カッ!)「――ペルソナ!」
 言葉と共にそのカードを握り潰す。すると、カードはガラスのように砕け散り、代わりに京子の背後に巨大な人影が現れた。
「ええっ!?ミ、ミラクるん?」
 その人影は京子が最も好きなものだと豪語する『魔女っ娘ミラクるん』の衣装を身に(まと)っていた。ただ、顔の部分は愛らしい少女のものではなく、黒いのっぺらぼうのようになっているので、不気味以外の何物でもない。
「いっけぇー、ディ○イーン・○スター!」
「それ違う! 作品が違うよ、京子ちゃん!」
 あかりのツッコミを余所(よそ)に、ミラクるん姿の人影が持つ魔法少女的ステッキから(まばゆ)い光線が放たれる。数え切れないほど(うごめ)いていた化け物はその光に()まれ、一瞬の内に姿を消した。
「ま、ざっとこんなモンかな」
 京子の勝利宣言と同時に、巨大ミラクるんは陽炎のようにその姿を消した。
「すっごーい、京子ちゃん! そんなのどうやって使えるようになったの?」
「ふっふーん。主人公の力をもってすれば、教えられずとも不思議能力を使うことができるのだよ、あかり君」
「じゃ、じゃあ、あかりも使えるようになるのかなぁ?」
 興奮気味に問いを投げるあかりを置いて、京子はモノクロの町を進む。
(ごめん、あかり。世の中には、知らない方がいいこともあるんだ……)
 心の中で何度もそう詫びながら。
 誰もいない町を五分ほど進むと、見慣れた建物が視界に入る。
「あれは、学校……?」
 それは二人が通う七森中学校だった。他の建物と変わらず本来の色はごっそり抜け落ちているものの、見た目は本物と何一つ変わらない。正に、完璧な偽物だった。
「行こう、あかり。きっとここに何か手掛りがあるはずだよ」
 京子はあかりの手を引いて学校の敷地内へ足を踏み入れる。一
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