月と月
[1/4]
前書き [1]次 最後
好き。貴方がとても。苦しい程に。
だけど、貴方はあの子が好き。
あの子も貴方が好き。
・・・・ああ、私の恋は一方通行。
*
いつからだろう。
アイツを、銀時を一人の男として見てしまったのは。
自分は女を捨てた身でありながら、女としての感情を抱いてしまった。
自分は素直じゃない。可愛くもない。女らしくもないし、茶だって汲んだことも無い。
良いとこなしだ。
・・・・奴の惚れた女とは違う。
奴の惚れた女は、可愛らしく、女らしく、ちょっと素直じゃない。だがその女の淹れた茶は美味いらしく、銀時は絶品だとか言っていた。
悔しい。上手くいかないでくれ。
・・・・自分を見てくれ。
そんな最低な感情が、次々と浮かび上がってくる。
自分に嫌気がさし、はあ、と溜め息を一つつく。
夜空に浮かぶまん丸い月を見上げ、月詠は煙管を吹かした。
「・・・・奴の惚れた女は太陽の様な女じゃ。奴は、月に照らされるより太陽に照らされる方が良く似合う。
銀時も月の様な男じゃ。月と月が重なる事はありんせん。
・・・・最初から、無駄じゃったんじゃ」
ツー、と傷の上を、一筋の涙が流れていく。
何を泣いている?
ごしっと涙を拭い、もう一度月を見上げた。
「・・・・終わりじゃ。奴を想うのは。わっちは、百華の頭。死神太夫」
そう言い聞かせるが、全く無駄。涙は溢れるばかり。
ああ、会いたい、銀時。会いたい、会いたい・・・・。銀時、会いた−−
「月詠?」
ビクリと肩が揺れた。
聞き慣れた低い声。
「ぎ、銀時・・・・?」
何故個々に、とわざと冷たく言い放つ。
本当は嬉しい。
「いやよお、俺の優しい彼女がオメーにな、会いてえっつーんだ」
「わっちに・・・・?」
「あー、俺いっつもオメーの話してたからさ。悪ィな、こんな遅くに。明日はどうも予定が合わなくて」
「そうか。気にするでない」
「・・・・サンキュ。おーい、入っていいぜー」
障子に映っていた華奢な影がゆらりと動く。
しゃなりしゃなりという音が合うような綺麗な歩き方。高く結んだ髪、白い簪。美しいピンクの着物。凛々しい表情。
「紹介するわ、コイツが俺の彼女の志村妙。新八の姉貴な。
お妙、コイツが月詠」
「ど・・・どうも」
煙管を口から放し、お妙の近くに歩み寄った。
見れば見る程美しい娘だ。
「貴方が月詠さんでしたか。私はお妙です。
銀さんから良く聞いていますよ。俺の知っている女じゃ一番良い女だ、と。
酷くないですか? 彼女がいるくせに、他の女性が一番良い女だなんて」
失礼しちゃうわ、とクスリと微笑む。
美しい。
「そ、そうなのか
前書き [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ