第一章
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がなくて」
「天涯孤独なのです」
このことを言うのであった。
「探してみたのですが」
「これが」
「誰も。いないのですか」
「そうです」
そうなのだった。これまたセツにとっては思わぬ言葉であった。
「誰も。身寄りはいなくて」
「それでですね。奥様さえ宜しければ」
「また随分なことを仰りますね」
表情は変えないが声は不機嫌なものであった。
「私に。妾の子を引き取れとは」
「少しだけでいいのです」
「そう、一時だけでも」
彼等はここで必死な様子を見せてきた。
「預かって頂ければ」
「その間に私達が何とかしますので」
「一時ですか」
この言葉に心を動かされなかったというのは嘘だった。
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