第九十三話 炎の選択その十二
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「俺は俺で闘うからな」
「それでは私は」
「あんたは見ていてくれよ」
そうしてくれというのだ。
「少なくともあんたにとって悪い話じゃないさ」
「それでは」
「馬鹿だよな、俺も」
こうも言った中田だった、今度は自分自身への言葉だった。
「最後の最後にな」
「愚かだと」
「ああ、そう思うよ」
こう自嘲の笑顔で言うのだった。
「本当にな」
「ですがそれでもですか」
「人間ってな、馬鹿なことだとわかっていてもな」
「したいことをしたい場合があるというのですね」
「今の俺みたいにな」
まさにだというのだ。
「そうしたい場合があるんだよ」
「そうですか、そしてそれは」
「それは?」
「私もですね」
声、セレネーは自分自身に苦いものを浮かべてそして言うのだった。
「それは」
「愚かだってわかっていてもやることがか」
「私は貴方よりも愚かです」
そのだ、中田よりもだというのだ。
「遥かに」
「想う人を神様にしたいことがか」
「はい、そのことがです」
わかっている、まさにそうした言葉だった。
「あの人の為に貴方達を犠牲にし続けていることは」
「何だ、わかってるんだな」
「わかっています、ですが」
「それでもだよな」
「私はあの人と共にいたいのです」
想う相手、その彼とだというのだ。
「今も眠っているあの人と」
「人間も神様も心があるからな」
「心があればですね」
「そう思う時があるからな」
そしてそうしなければいられない時がだ、例えそれが愚かであり許されないとわかっていてもそれでもなのだ。
「だからな」
「ですがそれでもです」
「俺達は同じなのかもな」
「そうですね、愚かだとわかっていてもそれをしたい」
「ややこしいものだよ」
今も自嘲して言う中田だった。
「心ってやつは」
「そうですね、本当に」
「けれど心がないとな」
どうなるか、中田はそのこともわかっていた。それでこのことについても彼は確かな声でこう言ったのだった。
「人間も神様もな」
「ただの機械になりますね」
「そうなるからな」
だからだというのだ。
「心はないとならないよ」
「本当にそうですね」
「さて、じゃあな」
「はい、貴方の最後の闘いはですね」
「あんたが憂う必要はないさ」
力が集まらないのではないのかとだ、そう憂うことはないというのだ。
「それは安心してくれよ」
「わかりました、それでは」
「じゃあ馬鹿な俺の馬鹿な最後の闘いを」
それをだというのだ。
「やるな」
「その闘いを見させてもらいます」
こう言ってだ、そしてだった。
中田は声の気配が消えたのを確認してから夕食を作った、そうしてそのうえでこれからのことに思いを馳せるのだった。
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