第九十三話 炎の選択その八
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「私は、いえ私達は」
「勧められないな」
「姉様の望まれることです」
剣士同士の戦いこそがだというのだ。
「剣士は怪物を倒し力を蓄えていきます」
「そしてその剣士同士が闘えばな」
「その集めた力が放たれてです」
「倒した剣士のものになってな」
「そしてです」
それに加えてだというのだ。
「姉様も力を得られます」
「そうして神話の頃からだよな」
「姉様は力を蓄えられていますので」
「それでか」
「そうです、剣士同士の闘いは」
して欲しくないというのだ。
「諦めて下さいませんか」
「だよな、けれどな」
「それでもですか」
「一人闘いたい奴がいるんだよ」
中田は笑って述べた。
「ちょっとな」
「だからですか」
「そう思うんだけれどな」
「諦めて下さいとしか申し上げられません」
聡美としてはだった、どうしても。それで強い声で言うのだった。
「どうか」
「そうか、じゃあ暫く考えるか」
「考えなおされることをお勧めします」
「まあな、それはな」
「とにかくです」
今はというのだ、聡美はとにかく中田に考えを訂正させようと必死になりそのうえで彼に語るのだった。
「貴方のご家族は助かりますので」
「そっちはだな」
「お兄様ならば」
医療の神でもあるアポロン、彼ならばだというのだ。
「必ず」
「そうなるだろうな」
「希望は現実となります」
人と常に共にあるそれがだというのだ。
「ですから」
「それでだよな」
「そうです、剣士の方とだけは」
闘って欲しくないというのだ。
「そうされて下さい」
「話は聞いたさ」
「それでは」
聡美は今も強い言葉だった、そして。
その話からだった、中田は聡美にこう話したのだった。
「それでそのアポロン神は何時来るんだ?」
「明日にでも」
「おいおい、早いな」
「今は飛行機ですぐですので」
ギリシアからもだ、すぐに来ることが出来るというのだ。
「明日にでも」
「そうか、それならな」
「間もなくです。お兄様は欧州の医学会の若き権威ということになっています」
「ドイツなら完璧だな」
「その国ならですか」
「世の中、特に知識人の世界ってのはな」
ここでは医学会も入る、そうした世界ではというのだ。
「権威主義が強いんだよ」
「知識人は権威に弱いと」
「そうした傾向があるんだよ」
「ではドイツの医学は」
「日本では今も権威なんだよ」
そうなっているというのだ。
「明治の頃からな」
「長きに渡っていますね」
「森鴎外からだな」
文豪として有名だが生前は医師、医学会の頂点に立っている人物として有名であった。陸軍軍医総監にまでなっている。
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