第五十七話 全てが終わってその四
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「お母さんそう思うわ」
「何につけてもそろそろなのね」
「そう、文化祭からもう一週間経つから」
もうそろそろ起きてもいいだろうというのだ。
「いいわね、じゃあね」
「うん、もう起きるわ」
琴乃はエクレアを食べながら答えた、ティーセットの中の。
「そろそろね」
「シリーズかハロウィンで」
「文化祭でも阪神の曲演奏したし」
もっと言えばそれ一本で通した。
「今もね」
「シリーズでそう出来ればね」
「阪神が勝てば」
阪神ファンとしてだ、琴乃は目を輝かせて言った。
「いいわ」
「楽しみよ、お母さんも」
母も阪神ファンだ、それでこう琴乃に返したのだ。
「本当にね」
「日本一になればいいわよね」
「なれるわよ」
母はあえてこう言った。
「絶対に」
「絶対に、よね」
「今年の阪神は違うから」
例年とは強さが、というのだ。
「だからね」
「勝てるわよね」
「あの時と同じよ」
母の目は輝いている、そのうえでの言葉だ。
「八十五年と」
「あのバースのいた時と」
「戦力の構成は違うけれど」
あの伝説の時は打線だった、阪神の長い歴史の中では例外的な時代だ。いつも投手のチームである中でだ。
「今は全てがね」
「整ってるわよね」
「ピッチャーはいつもよりさらによくて」
その自慢の投手陣がまずそうなったというのだ。
「先発、中継ぎ、抑えがね」
「特に中継ぎと抑えがね」
「いつもよりいいわ」
阪神はどれだけ弱い時でも中継ぎ抑えはよかった、強い時は尚更である。
「JFKよりもいいでしょ」
「防御率あの時よりいいわね」
「それで打つ方もね」
いつもネックになっているそれもなのだ。
「打って走って」
「チーム打率もホームラン数も打線もね」
「しかも盗塁数もね」
「どれもトップだからね」
「エラーもないでしょ」
「そっちは十二球団で最少らしいから」
「つまり完璧なのよ」
そうした強さだというのだ、今の阪神は。
「隙がないから」
「日本シリーズもなのね」
「勝つわ」
勝てる、ではなかった。勝つ、だった。
「このシリーズ阪神の胴上げよ」
「最初は千葉マリン球場だから」
言うまでもなく千葉ロッテマリンズの本拠地だ。海の近くにあるせいか風が強くこれにどう向かうかで戦い方が変わる球場だ。
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