第五十七話 全てが終わってその一
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第五十七話 全てが終わって
文化祭は終わった、運動会はその前に。
学園の秋の行事は全て終わった、それで琴乃は家に帰ると呆けた顔でテレビを観ていた。母はその娘にこう声をかけた。
「何かやる気ないみたいだけれど」
「やる気がないっていうかね」
どうかとだ、琴乃はソファーに寝転がってテレビを観つつ母に応える。
「何か全部終わって」
「気が抜けてるのね」
「そうなの」
それでだというのだ。
「ぼうってしてて」
「燃え尽きたのね」
母は娘の言葉を聞いてこう言った。
「そうなったのね」
「そうなるのね」
「そう、今の琴乃ちゃんは燃え尽きてるの」
「だからなのね」
「今何もやる気ないのよ」
「やる気がないっていうか」
どうかとだ、琴乃は気の抜けた顔で話した。
「何もないっていうか」
「琴乃ちゃんの中に」
「そうなの、抜け殻っていうかね」
そうした状態だというのだ。
「全部終わってやれやれって思って」
「もう何もないの?」
「文化祭終わったから」
それでだというのだ。
「後はね」
「ないのね」
「何かあればまた気合が入ると思うけれど」
「それでもなのね」
「そう、今はね」
何もかもが終わったからだというのだ。
「何もね」
「本当に気合が抜けてるわね」
「何かない?」
琴乃はそのぼうっとした顔で母に問うた。
「秋に」
「ハロウィンとか?」
ここで母が話に出したのはこれだった。
「それとか?」
「ハロウィンね」
「あれしないの?琴乃ちゃんの学校で」
母は娘に対して問う。
「八条学園って留学生も多いでしょ」
「うん、相当にね」
国際的な学園なのだ、琴乃のクラスにも留学生が何人かいる。
「いるわ」
「それじゃあね」
「ハロウィンするかどうかっていうのね」
「聞いてみてね、それでね」
「ハロウィンをしたら」
「してみたら?」
こう琴乃に提案するのだ。
「ここはね」
「そうね、今のままだとね」
気合が抜けきった状態ではだ、琴乃も言う。
「ちょっとね」
「よくないでしょ」
「今の私どんな感じ?」
「燃えカスね」
まさにそれだというのだ。
「もう何もかもが終わったって感じで」
「力石徹みたいなのね」
「矢吹丈ね」
そちらだというのだ。
「髪の毛は真っ白じゃないけれどね」
「ううん、よくないわね」
「せめてタイガーマスクか侍ジャイアンツになりなさい」
「どっちも主人公死んでるじゃない」
「原作ではそうだけれどアニメでは生きてるのよ」
梶原一騎原作の作品ではよくあることだ、悲しい結末よりもハッピーエンドを、となってアニメではそうなったのだ。
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