SAO編
第一章 冒険者生活
6.終戦の夜に想う
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私は男の人の前に出て話すのは自信がありませんし、それはネリーやチマにも言えます。年上の男の人ばかりな上に、その人たちの誘いを断るのですから、いくらあの二人でも尻込みしてしまうでしょう。
そして、キリュウさんも人と話すのはあまり得意じゃないそうです。一番最初に会ったときも感じましたが、あまり他の人から愛想がよく見えるお方ではないですから。でも、本当は表情に出ないだけ、というのが最近解って来た気もします。
と、話は変わりましたが、どうしようかみんなで悩んでいるとき、チマが「なら黙って居なくなれば良いんじゃないッスか?」と発言しました。それはどうなんだろうとは思いましたが、他に良い考えも浮かばず、結局は明日の早朝、誰も起きてこないうちにこの村を出て行こうということになりました。
でも流石にそれでは後にしこりを残すだろうと、各PTのリーダーだけに、キリュウさんの方から話をしておくということになりました。
「キリュウさん、ちゃんと伝えてくれたかな?」
「……大丈夫だと、思うよ? それにクラウドさん、リックさん、ジョーストさんは、強引な勧誘を止めようとしてくれてた側だったし」
そう。それもあって、この三人だけには事情を説明しておこうということになったんです。
私たちが居なくなったあと、みなさんに説明する役を押し付けるのは忍びないとは思いましたが……。
「…………この村」
「え?」
「いろいろあったねー」
疲れている。けれども充実してもいる。そんな横顔で、ネリーは言いました。
「うん。あったね……」
「あったッスね〜」
「えっ……?」
「チマ! 寝てたんじゃないの!?」
「横になってただけッスよ〜。さっきまで言葉を喋るのもダルかったッスから」
いきなり横に現れたチマ。言葉通り、動くのも億劫そうな顔です。
「――でも、この村で起こった中で一番の出来事と言えば、ズバリ……」
「一番?」
「なんのこと?」
チマは得意そうな顔で、私たちに向けて言いました。
「ズバリ! キリュウさんが…………《笑ったこと》ッス!!」
「ッ!!」
チマの言ったことは、確かにそれはこのエウリア村での出来事の中で、一番かもしれない。そう私は思ってしまいました。
『…………三人とも……お疲れ様……』
あのときの、キリュウさんの台詞、キリュウさんの表情は、忘れたくても忘れられないものだと思います。何に驚いたかって、恐らく初めて――私たちがキリュウさんと出会ってから今日までの約一週間で、初めて見た《キリュウさんの笑顔》に、でした。
それは、満面の笑顔というものではなかったですが、微かに、ですが確かに、キリュウさんは笑っていました。少なくとも、私たち三人には笑っているように
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