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乱世の確率事象改変
交錯するは向ける想いか
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 荒ぶる風が牙門旗を大きくはためかせ、地を渦巻く砂塵は地に立つモノ達の感情を表しているかのよう。
 軍勢を率いる一人の男の大きな背を見て、兵士達の誰しもが己が想いをそこに馳せた。
 自分たちの大切なモノを守ってくれるのはこの方なのだ、この方についていけば守ることが出来るのだ、と。
 軍は広い荒野にて男の合図により歩みを止めた。もうすぐ戦が始まるという事実を認識して、彼らは緊張と恐怖と興奮が綯い交ぜになった心を持て余し始める。
 ここにいる兵は彼の身体たる徐晃隊がほとんど……では無く新たに集まった新参者がほぼ全ての割合を占めていた。徐晃隊も混ざってはいるが、彼の親衛隊としての役割である数百と、副長の周りに数十だけ。ただ、副長の元には一つの隠し玉を置いてあったりもする。
 現在、徐晃隊の大半は雛里に預け、鈴々と共に袁術軍本隊への対応に向かわせている。敵が行軍の道程を変えて別の経路から他の城を目指す場合を考えての配置、さらには隙があるならば少しでも数を減らす事を目的として。
 孫権を侮っているのでは無く、様々な思惑があった。彼としてもこの采配に自身の思惑を乗せている。
 練度の違う部隊の混成は自身だけでは扱いづらく、それならば戦場で無理やりにたたき上げを行ってやろうと考えて。今の内に本物の軍と当てれば被害とは別に新参の兵を精強に仕上げる事が出来るのが一つ。戦場の経験は何よりも得難いモノであり、非人道的な判断だとしても、これからの乱世を見れば早い内に手を打つことは悪くない。
 さらには、孫呉側の狙いもある程度読めている事や、先の敵対に向けて幾つかの楔を打ち込みたいというのもあった。如何に人質を取られていようと、タダで返す気などさらさら無い。
 思考を打ち切り、ふいと振り向いた彼は付き従う軍を見やるが、その目を見て全ての兵は生唾を飲み込んだ。
 普段であれば、彼のどこか親しみやすい人となりから穏やかな色が浮かび、自分達に安心と信頼を約束してくれるはず……しかしそこにあったのは凍てつくような冷たい色。優しさの欠片も無く、まるで兵を責めているかのようであった。

「お前ら、兵士になったって事は守りたいモノがあるんだろう?」

 瞳と同じく、聞いたモノを凍りつかせる声音で語られた言葉は兵士達にとって当たり前のこと。誰しもが個人の大切な何かを守りたくてこの戦場へと来ているのだから。
 それぞれがもちろん当然だとばかりに一様に頷き、今になって何故そのような事を聞くのかと疑問の視線を向ける。

「俺はそれを直ぐには守ってやらんぞ」

 呆然。兵達は彼の放った言葉に耳を疑った。困惑と期待を裏切られた事に対する憤りが胸中に込み上げ始め、誰しもから眼前に控える上司への信頼が落ち込み、批難の目が向けられて行く。しかし、

「守りたければ自分で守れ
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