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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜慟哭と隔絶の狂想曲〜
レクイエム
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にもそれらしき影が()()()()()()

―――人込みに逃げ込んだ………?いや、それにしちゃ速過ぎじゃないか?

真っ赤に染まる眼光が、さながらサーチライトのように辺りをねめつけるが、やはり見当たらない。

その間にも、敵は殺到する。

完全に狂気に呑まれている白目男の首を掻っ捌き、水っぽい音とともに首からずり落ちた生首を引っ掴み、唾液を撒き散らしながら腕を振り下ろそうとしていた男の細剣の側面に思いっきり投げつける。

鈍い音とともにブレた剣線から目を逸らし、短刀を男のノドもとに突き立てる。

「ご………かッ…ッ!」

悲鳴とも、呻きともつかない音が漏れ、カクンと男の膝から力が抜ける。

痙攣した後に動かなくなった男を意識からさっさと外し、レンは手元に視線を移す。

「リータねーちゃん……」

レンが見つめるのは、蒼髪(いまは赤黒くなってしまっているが)の女性――――ではなく、彼女の頭上に浮かぶHPバーだった。

通常であれば白く染まっている枠線は、しかし今は毒々しい緑色に点滅してしまっている。

(ポイズン)………。HPの減り方からして、レベル5のリーサル毒か」

チラリ、と手元のポーチに視線を落す。

そこには状態回復ポーション、解毒ポーションはもちろん、回復ポーションまでもが空っけつの状態だった。クリスタルなど論外だった。

「ねーちゃん、ポーション類ってない?解毒系だったら助かるんだけど」

一筋の希望にすがるような詰問だったが、しかしその希望に反してリータは首を横に力なく振った。

「ここには死にに来たようなものだから。アイテムは全部置いて来たのよ」

「……………そっ…か」

レンの脳がオーバーヒートし始める。

リータのHPは眼も染まるような赤に染まっている。さきほどの謎の一撃だけでここまで落ち込んだとは、にわかには考えがたい。ということは、やはり度重なる連戦で少しずつ蓄積されたダメージなのだろうか。

その、残り僅かなHPも毒のダメージによって少しずつ削られていく。この世界での毒は、放って置いても直るとか、残りHP1で消えるなどといった親切仕様は存在しない。

放って置いたら死ぬ。そんな、限りなくシビアな現実なのだ。

もう一つの現実。

現実よりも現実。

それがこの世界なのだ。

どうする………ッ!

どうするッ………ッッ!?

沸騰しかけた頭を一瞬で冷やしたのは、腕の中のリータが放った囁き声だった。

「ねぇ、レン……君」

「なに!リータねーちゃんッ!ちょっと今考え事を――――」



「お姉さんを、さ。ちょっと殺してくれない?」
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