オリジナル/未来パラレル編
第10分節 高司夫妻 (1)
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
光実によって連れて来られた場所は、清貧、という形容がぴったりなボロ……もとい年季の入ったアパートだった。
「光実くん、ここに住んでるの?」
「そうだよ。舞さんと一緒にね」
はて、と咲は首を傾げる。光実と舞はあくまでチームメイト同士だったはずだ。それとも咲が知らないだけで二人はそういう関係だったのだろうか。
光実はいたずらっ子のように笑み、等間隔に並ぶドアの一つを開けた。
「ただいま〜」
「おかえり〜……って、紘汰!? 咲ちゃんも!」
畳間のコタツでノートをつけていた女性が驚いたように膝立ちした。
「え、何で。もうそんな時間だっけ」
「大丈夫ですよ、舞さん。僕が出先で会っただけだから」
(舞さん、だったんだ。うわー、歳とってもかわいいまんまだなあ。あ、くるくる髪やめたんだ)
舞は慌てたようにノートやレシートの束を片付け始める。
「とにかく上がって。寒かったでしょ? といってもうちの中も温かいとは言いにくいんだけど」
「んじゃ遠慮なくジャマするぜ」
「お、おじゃましまぁす」
部屋に上がった咲たちと入れ替わりに、舞が立ち上がって台所に行った。
舞はヤカンをコンロにかけた。お茶を淹れてくれるようで、咲は少し恐縮した。親のついでではなくもてなされるのは、記憶のない咲にとっては初体験だ。
コタツの前に腰を下ろし、部屋の中を見回す。本棚の上に飾られた写真立てで目が留まった。
写真立ての写真の中には4人の人間が並んで写っている。白い狩衣姿の中年男性と、妻らしき中年女性。そして巫女服の舞と、作業用エプロンを着けた光実。二人ともビートライダーズの頃からずいぶん以上に様変わりしている。
「ね。どうして光実くんと舞さん、いっしょに住んでるの?」
正面に座った光実と、お茶を盆に載せて持ってきた舞が、顔を見合わせる。
「――どうする? 言っちゃう?」
「そうですね。ささいなことでも、この二人ですから」
舞がお茶を人数分、コタツの上に置いてから光実の隣にちょこんと座った。二人は目線を交わし。
「「じゃーん!」」
光実と舞は同時に左手の甲をこちらに向けた。どちらの手の薬指にも、揃いの指輪が嵌っていた。
「おおっ。ついに指輪買ったのか」
「先週、やっと」
「人生3回目のプロポーズしてもらっちゃった」
「ぷろぽーず!? それ、結婚指輪!? ふたり……夫婦!?」
光実も舞も揃って笑った。
「うん。籍入れたのは最近だけどね。僕がお婿さんです」
「結婚式も、あたしたちがお勤めしてる神社で挙げてもらったの。咲ちゃんも来てくれたのよ。ドレスの咲ちゃん可愛かったよ〜」
咲は紘汰を見やる。紘汰は目線で「思い出したか?」と問う
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ