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戦国異伝
第百五十四話 北ノ庄その十三
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「資質も人柄もな」
「それがしもですな」
「そうじゃ、しかしのう」
 明智はわかる、だがだと言う柴田だった。その首を傾げさせつつ。
「松永めだけはな」
「あの御仁を用いられることだけはですか」
「わからぬ。あからさまに怪しいが」
「はい、誰がどう見ても」
「しかし殿はじゃ」
 信長、彼はというのだ。
「用いられるからのう」
「よく傍に置かれてもいますし」
「そのことも」
 危ういとだ、前田と佐々も言う。
 中川もだ、こう言うのだった。
「例え傍に与三殿達がおられるにしても」
「相手が相手じゃからな」
「はい、やはり危ういです」
 中川も柴田に懸念する顔で言うのだ。
「何かあれば」
「全く以てな」
「若し何かあれば」
 この場合の恐れについいてもだ、中川は言及した。
「その時を考えますと」
「問答無用で斬るか」
 遂にだ、柴田は最後の手段を口にした。
「そうするか」
「ではわしが」
「いや、わしが」 
 前田と柴田はこの役をこぞって買って出ようとする。
「わしの槍ならばあ奴とてかわせませぬ」
「わしの太刀ならば」
「いや、あ奴はわしが」
「わしこそがじゃ」
「お待ち下され」
 言い合いになる二人にだ、明智が言う。
「あの御仁は一人で行かれるよりもです」
「何人かで行くのがよいと申されるか」
「それが十兵衛殿のお考えか」
「左様、しかもやたら殺気を見せることも」
 それもだというのだ。
「よくありませぬ」
「では、ですか」
「今は」
「はい、待つのがよいかと」
 今は、というのだ。
「柴田殿の仰る通りにするのもよいですが」
「わしはあ奴を少しでも早く除きたいのじゃがな」
 柴田は明智に応え己の偽らざる考えを述べた。
「しかしか」
「はい、今はまだ」
「頃合を見るべきじゃな」
「問答無用で斬り捨てられるにしても」
 それでもだというのだ。
「今は戦をしています、それに専念しましょう」
「それもそうじゃな、ではな」
「はい、それでは」
 こう話してそしてだった、柴田達はまだ様子を窺うことにした、そして。
 松永はまだ飄々としていた、羽柴はその彼を見て言うのだった。
「そこまで悪い御仁には思えませぬが」
「だから猿、御主はじゃ」
 柴田がその話に呆れながら応える。
「もっとよう見るのじゃ」
「人をですな」
「御主程人を見る目のある者が何故じゃ」
「ですからそれがしが見たところ」
「あ奴は悪人ではないか」
「左様です」
「どうしてもわからぬがな」
 柴田から見ればどう見てもだからだ、それで言うのだった。
 だが、だ。それでもだった。
 柴田も明智の言葉に頷いている、一度頷いたことにはそうおいそれとは変えることはしないのが彼だ。それ
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