第三章
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第三章
「男がいなかったのは残念だけれどね」
「まあ楽しい夜を過ごせたらそれでいいんじゃないのかい?」
「その通りさ。さて、今日は」
「男かい?女かい?」
「どちらでもいい」
何も考えていないといった感じで答えたのであった。
「どちらでも。気に入った相手がいれば」
「それでいいのか」
「ああ、今日はそれで行く」
彼はこう答えた。
「それでね」
「そうか。じゃあ君の望むようにすればいい」
「そうか」
「少なくとも僕が口を挟むことじゃない」
友人はそう述べた。いささか突き放したような言葉であったが実際は彼の考えを尊重しているのである。彼の人間がわかっているからだ。
「好きにすればいいさ」
「酒と同じでだね」
「その通り。君はワインで僕はビール」
自分達がそれぞれ飲んでいる酒を出してきた。
「それでいいじゃないか」
「じゃあこのまま飲んでいくか」
「それで今日はどっちにするんだい?」
「ああ、そっちか」
大村は友人が何を言いたいのかわかった。それは彼の本来の道についてであった。
「そっちは。そうだな」
「どっちだい?」
「どっちでもいい気分だな」
彼は目線を少しだけ上にやってそう述べた。考える顔であった。
「正直言って」
「そうなのか」
「そうさ。だから今はこれを飲んで誰か気に入った相手にするよ」
「こだわりは捨てたのかい?」
「いや、それはないよ」
こだわりを捨てたわけではない。色道も結局はこだわりなのだ。それについてもわかっているからこそ否定したのである。大村もまたこだわりの男なのだ。
「やっぱりね。眼鏡に適う相手じゃないとね」
「それが男か女かっていうだけで」
「そういうことさ。とにかくいいのが見つからないとね」
彼は述べる。
「そのこだわりも発揮されはしないものだけれどね」
「難しいな、それはまた」
「いや、決して難しくはないよ」
それもまた否定する。そうしてここでも彼の考えを述べるのであった。
「楽に考えればいいんだ」
「楽にかい?」
「そう、楽に」
大村は述べる。
「こだわりはあってもそれに固執することなくね」
「楽にやっていくのか」
「あとは。そうだな」
彼はまた考える顔になった。そうしてまた自分の考えを述べるのであった。
「あれだね。好きな相手の好みを増やすこと」
「好みをかい」
「そうすればより楽しめるようになる」
笑って友人に語る。実際に彼は女に関する嗜好はかなり広いものがある。しかも男についてもである。どちらもほぼ誰でもいけるといったレベルでである。
「そういうものさ」
「酒と同じか」
「大して変わりはしないね」
言われてその通りだと心の中で思った。実のところ酒についても色についても結局は同じなの
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