第一話 赤い転校生その三
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だが何はともあれ薊はクラス、二年B組の一員になった。ホームルームの授業の後で。
女子生徒達、寮生の娘が中心となり薊の席の周りに来た、薊は自分の席に右手で頬杖をついて無愛想な顔でいる。その彼女に問うたのだ。
「ねえ、天枢さんって横須賀から来たのよね」
「そうだよ」
やはりぶっきらぼうに答える。
「ついでに言うと野球はベイスターズファンだよ」
「あっ、地元なのね」
「地元のファンなのね」
まずはこのことが知られた。そして次の質問はというと。
「趣味は?」
「音楽とバイクだよ」
「あっ、バイクなの」
「バイク乗るの」
「オフロードが好きなんだよ」
その種類のバイクに乗っているというのだ。
「幸いこの学校バイク乗ってもいいしな」
「うん、許可が必要だけれどね」
「許可貰えたら寮生でも乗れるよ」
「ガソリン代は必要だけれどね」
「ガソリンはいらないからな」
薊は窓の方を見ながら質問に答えていく。
「あたしのバイクは」
「えっ、ガソリンいらないって!?」
「どういうこと、それ」
「電気バイク?」
「それかしら」
「さてな。けれどあたしのバイクはいらないんだよ」
やはり窓の外の景色、学園の草木の中に白い建物が並んでいる独特の景色を見つつ素っ気なく答えていく。
「そういうのはな」
「ううん、そうなのね」
「そうしたバイクもあるのね」
「どうしたバイクかはわからないけれど」
「面白いバイクね」
「それじゃあね」
もう一つ質問が来た、今度の質問はというと。
「部活とかは」
「この学園拳法部あるよな」
薊は質問をする女子生徒の顔を見ずに問い返した。
「拳法だけでなく武器も使う」
「武器って?」
「あたし棒術やってるんだよ」
このこともだった、薊は自分から話した。
「それでそこに入るつもりなんだよ」
「棒術、ねえ」
「それするのね」
「ちょっと珍しいだろ」
薊は自分からこう言った、しかも笑顔で。
「棒術ってのは」
「そうね、剣道とかは普通だけれど」
「あと女の子なら薙刀ね」
「うちの学校薙刀部もあるからね」
剣道部だけでなくというのだ。
「他にも色々な部活があるけれど」
「モトクロス部なんてのも」
「ああ、モトクロスもやるよ」
モトクロスバイクもだというのだ。
「オフロード派だからさ」
「じゃあモトクロス部にも入るの?」
「そうするの?」
「それもいいかもな」
やはり笑って言うのだった。見ればその笑顔も少年めいている。元気がよく妙なまでに屈託のないものである。
「モトクロス好きだしさ」
「棒術にモトクロスねえ」
「随分活発ね」
「じゃあ横須賀でもそうだったの?」
「身体動かしてたのね」
「そうだったね、勉強よりもね」
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