第二章
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とにシニカルな笑みを浮かべるのだった。
「こんなこともあるかな」
焦りはしない。しかし先程の友人との会話を思い出すのだった。望むものはいつも手に入るわけではない、彼はこの言葉を思い出してまたシニカルな笑みを浮かべるのだった。
「やれやれ。あの言葉の通りかもな」
その笑みのまま懐から煙草を取り出して火を点ける。ゴールデンバットはほろ苦くまるでチョコレートのようである。本体はそんな味はしない筈なのにそうした味がすることに彼は不思議なものを感じた。そうしてそのゴールデンバットを味わいながら思った。
「これも。望まないことだろうな」
そう考えて夜のネオンを見る。赤や青の派手な光の下で人々の陽気な笑い声が聞こえる。そこには彼の愛するありとあらゆるものがある。彼もいつもはその中にいる。だが今日に限ってはどうにもそこから阻害されているのであった。
その阻害も感じながら煙草を吸い続ける。煙草が終わりに近付いたところで彼はふと考えを変えたのであった。
「そうだな」
ふと思いついたのだった。
「ここは女にしておくか」
妥協であった。しかしそれでもよかった。
女も好きだからこそ。こうしたところで彼は実に思い切りがよかった。そうしたところも彼を一代の色事師にしていたと言える。彼はすぐに女を探しはじめた。
「いなければいないで」
彼は思った。
「そうした店に行けばいいしな」
そうも考えながら女を探す。そうして見つけた一人の女と夜の街に消えた。そうしてネオンの中で一夜限りの行きずりの愛を楽しむのであった。
その次の日の夜。彼はまた昨日の友人と飲んでいた。場所はやはりあのバーであった。
「何だ、妥協したのか」
「そうさ」
彼は平気な顔でそう答えた。
「そういう日もあるものさ」
「また随分簡単に妥協したな」
「妥協もこの道には大事だからね」
そう述べるが確かにこれもまた真実であった。望むものが得られなければ他のものを望む。そういうことである。
「別に悪くはないんだろう?」
「悪いとは一言も言わないよ」
友人もそれは否定しない。
「女もこれもそうだろう?」
そうしてここで自分が飲んでいるビールを見せるのであった。コップに入っているそのビールは程よい具合に泡を出していた。
「何がいいかは特にいえないものじゃないか」
「そういうことだね。昨日の女もよかった」
「そんなにか」
「うん、楽しい夜を過ごさせてもらったよ」
大村は昨日と同じワインを持っていた。そのワインを飲みながら楽しげな顔を見せている。
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