SAO編
第一章 冒険者生活
5.戦友には無粋なこと
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スかね……?」
疲労か、未だ戦闘の興奮が収まらぬのか、荒い息を吐きながらチマがぽつりと声を出す。
「どう、だろ……? あとはクラウドさんたちが担当している門がどうなっているかだけど……」
剣に体を預けながら立っているレイアが、下を向きながら応えた。上を向くのも億劫なほど疲れたのだろう。垂れた銀髪でその顔は見えない。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
ルネリーは草の生えた地面に腰を下ろし、体を仰け反らせるように顔を上に向けて、両手をそれを支えるように空を仰いでいた。疲れて話す気力も無いようだ。
三人の革鎧も、俺のコートも、所々擦り切れていて、もう既に耐久値の限界に近く見える。
「…………ルネリー、レイア、チマ」
そんな疲労困憊といった三人に俺は声をかけた。
「……?」
「は、はい?」
「どーかしたッスか?」
三人が、俺に向けて顔を上げてくる。
金髪の双房を犬の耳のように垂れ下げ、戦闘後の安堵のせいか、やや気の抜けた顔をしているルネリー。
癖の無い銀色の長髪を両手で後ろに流し、先ほどの気迫が嘘のように穏やかな顔を向けるレイア。
肩にかかる程度の癖っ毛の茶髪の先をクルクルと指でいじりながら、顔を傾げているチマ。
俺は、三人に向けてその言葉を言った。
「…………三人とも……お疲れ様……」
「……っ!!」
恐らく、この三人が来てくれなければ、敵中で槍が壊れた時点で俺は終わっていた。
あのとき俺の前に立った三人の背中に、俺は心強さを感じた。
だから本当なら、戦いが終わった今、俺は三人に礼を言うべきなのだろう。
だが、俺は敢えて言わなかった。何故なら――
「あ……は、はい! キリュウさんもお疲れさまでした!」
「……お疲れ様でした」
「お疲れさまッス〜」
そんな他人行儀なことは、《戦友たち》には無粋だと思ったからだ。
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