SAO編
第一章 冒険者生活
5.戦友には無粋なこと
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ではない。ただの鞭による攻撃だが、流動するその動きは、剣での攻撃などより一見、見切り難く感じる。
「…………」
しかし俺は、体を横に少しズラすだけでそれを避けることが出来る。風切り音をさせて顔のすぐ横を通ったそれは、地面に当たって電気が弾けるような音をさせた。
鞭とは――《波》だ。
うねうねと予測し辛い軌道のように見えるが、実際には腕の動きを、つまりは《力の流れ》をそのまま先端へと伝えるように動くのが、《鞭》という武器の特徴だ。
上から下に振り下ろす様な動きをすれば、その高さの波が鞭を伝う。基本的に腕の振り下ろした直線軌道そのままに動くので、鞭の先端に気を取られなければ問題無く避ける事は出来る。
――まあだが、実際に鞭を武器に扱っているような武術家の攻撃は正に縦横無尽の変幻自在。流れに流れを重ねることで予測不可能な攻撃をしてくる。……しかし、それにも攻略法は無いこともないのだが。
ゴブリンコマンダーはそこまで鞭の扱いに長けている訳ではない。だがそれでも、ルネリーたちのような武術未経験者では鞭の先端の動きに気を取られて、全体を見る事は出来ないだろう。
一応、俺は祖父から様々な武器の相手をさせられたことがある。その中には鞭もあった。
「ガァッ、グラァ!!」
再び鞭による攻撃。――が、俺はそれを避けながら敵に向かって進む。
東雲流歩法の一つ、《円歩》。
片方の足を斜め前に出し、地面に着くと同時に後ろの足で地を蹴る。先に前に出した足の指の付け根や踵を支点にして、弧を描くように素早く移動する初歩の技術。特に難しい技術ではないが、動きを型として反復練習することにより、咄嗟の状況では頭で考える時間を省いて動くことが出来る。
「…………ギギ」
ゴブリンコマンダーとの距離、約三歩。此方の射程に捕らえた。
周りではルネリーたちの声が聞こえる。教えた通り、お互いに呼び掛け合って協力し、多数の敵相手に善戦しているようだ。
しかし俺は、目の前に居るゴブリンコマンダーから視線を外すことが出来なかった。今の俺では、少しの油断も命取りになり兼ねない。
「……」
刹那に時が止まる。
最初に動いたのは相手だった。
「ギィグルァ!!」
「!」
ゴブリンコマンダーの動きに既視感。あの形は……
――ソードスキル!!
直ぐに結論を出した俺は、自分の頭の中に焼き付いたあの藤色の攻撃の軌道から外れるように体の位置をズラす。
ごおおっ!! という風の唸り声とすれ違うように前に進み、ゴブリンコマンダーの顔に、両腕を突き出すような槍の刺突を放った。
「はっ!!」
「グガッ!?」
突き出した槍を引くと同時に槍を立て、体を回し
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