第5章 契約
第84話 あなたを……愛している
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そう。地球の歴史に於けるキリスト教的な意味での聖戦。十字軍の遠征と言うモノは、確かに西欧諸国に因る聖地奪還の大義の元に行われた物では有ったのですが……。
しかし、その内情に付いては、初めから領土欲むき出しで参加する者も居り、すべてが熱狂的な信仰心に因り始められた、と言う訳ではなかったようです。事実同じキリスト教国のハンガリーや東ローマ帝国の首都を十字軍が襲った、と言う記述も残されているぐらいですから。
更に、その十字軍と言うのが、すべて高潔な騎士に因って編成されていたと言う訳ではなく、庶民や、中には犯罪者すれすれの連中も居たようですから……。
ちなみに、イスラム側の記述を紐解くと、
『フランク王国に通じている者なら誰でも、彼らをけだものとみなす。ヨーロッパの人間たちは、勇気と、戦う熱意には優れているが、それ以外には何もない。
動物が力と攻撃性で優れているのと同様である』
……と言う記述が残されて居り、
更に、十字軍に従軍していた聖職者が残した、陥落させたエルサレムの街の記述の中には、
『聖地エルサレムの大通りや広場には、アラブ人の頭や腕や足が高く積み上げられていた。まさに血の海だ。
しかし当然の報いだ。長いあいだ冒涜をほしいままにしていたアラブの人間たちが汚したこの聖地を、彼らの血で染めることを許したもう神の裁きは正しく、賞賛すべきである』
……と言う物が残されています。
彼らの行為に騎士の高潔さを求めるのは、初めから間違って居ますか。
それに、戦場での略奪行為と言う物は地球世界でも行われて居ますし、それ以外の惨い行為も行われて居ます。
其処に宗教的大義が振りかざされるのです。この集団が暴走を開始したら止める事は難しいでしょう。
とある街に攻め入った十字軍の指揮官が、キリスト教徒とそれ以外の人間の見極め方を部下に問われた時、その指揮官はこう答えたそうですから。
『全部殺して終え。見極めるのは神だから』
……と。
正しいキリスト教徒なら、例え刃に切り裂かれても死にはしない、と言う事なのかも知れませんが。
そして、地球世界では加害者側で有ったフランスが、このハルケギニア世界では被害者と成ったマジャールやその他の地までもその版図に納めている事から考えると、この世界のガリアが今回の聖戦の開始を告げる詔を喜ぶ訳はないでしょう。
誰も、自分の故郷が戦場に成る事は望みませんし、まして、神の名の元、徴用と称して食糧や貴重品などを略奪し、女性を姦して行く連中が国土を踏みにじって行く様を見て喜ぶ訳は有りません。
神の名の元に、正しい行為として食糧や資財の供出を申し出た宗教的大義に裏打ちされた軍隊に対して、その申し出を断った村が如何なるのか。
まして、そんな
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