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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第84話 あなたを……愛している
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報が出て来るだけ。知識をある程度有して居ると言うだけで、本当の意味で為政者に必要とされる才能を持って居るとは思えません。

 矢張り、国の王には、王に相応しい人間が就くべきでしょう。
 イザベラの意図を計りかねている俺。ただ、それも今、この場で推測する必要のない内容。そうあっさり結論付け、

「その前に、姉上。ガリアはその聖戦とやらに参加する心算なのですか?」

 次に重要な問いを行う。この答えが自身の予想と違う物ならば、別の方法を考えるか、もしくは、その方針を覆す程の魅力的な条件を提示する必要が出て来ます。
 但し、その聖戦などと言うモノに俺の暮らして居る国を巻き込む訳には行かないのですが……。
 少なくとも、その『聖戦』が、俺の知って居る地球世界の聖戦と同じモノならば。

 イザベラがゆっくりと首を二度横に振る。その仕草はタバサに良く似た仕草。流石は従姉と言うトコロですか。
 そうして、

「以前の聖戦がガリアにもたらせた被害を知って居るのなら、こんな馬鹿な命令を受け入れるガリアの王は居ないよ」

 前の聖戦の時に、エルフに殺されたガリアの民と、敬虔なブリミル教徒によって殺されたガリアの民。どちらの方が多いと思って居るんだい。

 本当に憎々しげにそう続けるイザベラ。
 そもそもガリアが新教にその軸足を移したのは、堕落した旧教の聖職者への反発が大きかったからだ、……とタバサからは聞かされて居ますが、このイザベラの答えから類推すると、それ以外にもかつての聖戦の際の傷痕も有るのかも知れません。
 確かに、地球世界でも南仏の方は十字軍が暴れ回る事に因り、人的、経済的な非常に大きな被害を被ったはずですから。

 尚、何故、地球世界でその事……南仏が十字軍の遠征によって大きな被害を受けた歴史的事実に付いてあまり口にされないのかと言うと、それまで完全なフランス領とは言い難かった南仏が、その十字軍が暴れ回った事に因り勢力を失い、結果、パリに拠点を置く王朝に併呑される事と成ったから、だと言われて居ます。
 南仏に取っては自主独立、独自の文化に根差した国家を蹂躙された歴史的事実だとしても、現在の主導的立場に有る国の中心が、その十字軍が暴れ回った結果、その地域を併呑して仕舞った地域だとしたら、その事を殊更、声高に叫ぶ訳は有りませんから。

【聖戦に参加する軍が、すべて糧食や物資を用意して居る真面な軍隊ばかりとは限らなかった】

 そして、イザベラの言葉で説明の足りない部分の補足を行うタバサ。
 もっとも、イザベラはわざと説明の足りない言葉で伝えて来たのだと思いますが……。

 ただ……。
 成るほどね。このハルケギニア世界でも、聖戦に関しては歴史上の地球世界の聖戦と大きな違いが有る、と言う訳ではないようです。

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