第5章 契約
第84話 あなたを……愛している
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「あれは一種の呪い。わたし達にも理解不能な現象」
少し離れた位置。……壁一面に存在する書架の前に置いた自分専用の椅子。その上に浅く腰を掛けた姿勢から、俺を真っ直ぐに見つめて湖の乙女はそう言った。
彼女に相応しい口調。そして、事実を告げる者に相応しい口調で……。
但し……。
呪い。地球世界に存在する大ブリテン島規模の島を三千メートルほど上空に浮かせて、其処を人間が住める……。想像するに地球世界のイギリス程度の環境……気候や酸素の濃度に整える魔法。
そんな大規模の魔法を行使する。
更に、それが呪いだと言う事は、『アルビオンが浮遊島である』と言う事が誰かに取って……その呪いを掛けた個人か、魔術組織かは判らないけど、ソイツに取って必要だったと言う事。
現実を大きく捻じ曲げてまで。
そして、それ以後、アルビオンが上空に滞空し続けると言う状態を維持する為にも、おそらく莫大な魔力を必要とする。
「確かに理解不能やな」
右手の人差し指と親指を自らの顎に軽く当てながら、思わず着飾った、イザベラの前で演じ続けて来たよそ行きの態度を忘れ、普段の口調で答えて仕舞う俺。
もっとも……。
何の理由が有ってそれだけの大きな事を為さなければならないのか、その理由がイマイチ不明ですが。但し、その精霊力の暴走に因り大地が浮かび上がる現象が『呪い』であるのなら、対処は可能ですか。
取り敢えず、相手の思惑を予想するのは止め、現実の事象に対処する事を優先する事に決めた俺。
そうだとすると、その為に必要な情報は……。
先ず、俺の正面のソファーに座る巨大なおデコを持つ姫に視線を向ける。
そうして、
「姉上。ガリアは、その聖戦とやらが発動された事を国民に発表するのでしょう?」
今までのガリアの対応から考えると、隠すよりは発表する方を選ぶと考えた上で、最初にこの問いを発する俺。
もっとも、今のガリアの民に、その聖戦の意味が……。
其処まで考えてから、少し首を横に振って見せる。
そう。前に聖戦が行われた時期如何に因っては、ガリアの民の方にその際の記憶が残って居る可能性も有りますから。
俺の問いに対して最初にひとつ首肯き、ロマリアはガリア王に対して通告して来ただけ、と前置きをした後に、
「すべての民に理解出来るかどうかは問題じゃない。報せる事に意義が有る」
イザベラが大体、予想通りの答えを返して来る。そうして、
「国民を色々な情報に触れさせる。今は意味が判らなくても、今まで知らなかった情報に触れさせる事に意味が有るからね。これを止める訳には行かないのさ」
……と続けた。
その時のイザベラの顔は酷く疲れた者の表情。まるで無明の荒野を一人行く旅人のような表情
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