01:その青年、暁魔城
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、その青年の存在は非常に目立っていた。
右手には登録魔族を示す銀色のリングがはめられている。それは珍しくはない。同じリングをはめた登録魔族は、周りにいくらでもいる。注目を集めているのは、その容姿だ。黒い髪を長く伸ばし、一本結びにしている。線の細い顔つき・体つきをしており、一見しては女性かと見紛うばかりだ。彼が歩くと人々が振り返り、少女たちは黄色い悲鳴を小さく上げる。
青年は大きめのトランクを引きながら、アルディギア空港の中を歩いていた。いくつかの通路を通り、そして、急にぴたり、と立ち止まった。周りの人間が、どうしたのだろうか、と彼を見ると、当人は宙を見上げて呟いた。
「……えーっと……絃神市行きの飛行機って、どこから出るんだっけ……」
……どうやら道に迷っただけだったらしい。周りの人間がどことなく呆れたような表情をする。少女たちは「かわいい」「かわいい」「天然なのかな」などと口々に呟く。その中の誰かが、勇気を出して彼に声を掛けようと口を開いた、その時――――
ドンッ!!と、何かが爆発する音が響いた。人々の間に混乱が走る。音のした方向から、火の手が上がっていた。「なんだなんだ!?」「テロか!?」などと叫び声が上がる。何があったのか。人々が様子を見ようとそちらに向かって歩き始めた時。
「動くな!!」
通路の向こう側から、マシンガンを持った二人の男が現れた。二人とも真っ黒な装束に身を包んでいる。どこからどう見ても「テロリスト」の外見であった。黒装束の男の内片方が、マシンガンを構えながら叫ぶ。
「俺達は《アルディギア解放軍》!アルディギア王朝の支配に抗する者達だ!!」
それを聞いた住民たちの多くが、なにを言っているんだこいつは、とあきれた表情をする。アルディギア王朝の統治は完璧と言える。徴税も平均的だし、産業も発達している。何より、国民の失業率は世界最低基準なのだ。住民のほぼ10割が、この国の暮らしに満足している。
それに抗しようなどとは、気違いもいいところだ。
「……どうしてそんなことを企んだりしたんです?なにも不満など無いでしょうに」
そして国民たちの言葉を代弁したのは、あの黒髪の青年だった。とぼけた表情で、肩をすくめながら聞く。そしてそれは、テロリストの気に障ったようだった。
「うるせぇっ!!ガキはすっこんでろ!!」
そう叫び、いきなりマシンガンを乱射。住民たちから悲鳴が上がる。フルオートで射撃された弾丸が、青年の体を穴だらけにする……そう思われた。
しかし、全ての弾丸は、青年の少し手前で止まっていた。まるで見えない壁でもあるかのように、弾丸がそこでストップし、ころころと床に落ちる。
「な……」
「危ないじゃないですか……。僕だけな
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